序文
日本は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)を、1979年に批准 した。すなわち、35年近くにわたり日本は、自由権規約で規定されている権利を尊 重し、また権利が侵害されたあるいは侵害されるおそれのある市民に対して効果的 な救済を行う義務がある。日本における死刑の適用は、死刑が存在している全ての 国々が守るべき最低基準を定めた自由権規約及びその他の国際基準によって厳しく 制限されている。
日本における死刑制度の存置自体が自由権規約に反するわけではない。しかし同 規約は、死刑制度廃止が全批准国にとっての最終的な目的であることを想定してい る。自由権規約を批准した以上、日本には、死刑廃止に向けて、死刑執行を漸次制 限するように国内法及び措置を拡大していく義務がある。
日本政府は、世論による死刑支持を主な理由として、死刑制度の廃止を求める要 求に抵抗してきた。しかし日本政府のこの主張は、自由権規約及びその他の国際基 準に従い死刑制度を制限していく必要性と関係がなく、また自由権規約の第6条6 項に定められている「 死刑の廃止を遅らせ、又は妨げるために援用されてはならな い」という規定による日本の義務とも関係がない。
本報告書は、The Death Penalty Projectの委託により、自由権規約の下で死刑に関 わる日本の法的義務を精査するとともに、この問題に関係する課題として死刑に対 する日本国民の態度に関して検討を加えている。
死刑に対する国民の態度を的確に理解することは、もちろん必要なことである。 本報告書では、内閣府による世論調査の結果に関して批判的な検討を行うとともに、 死刑に関する別の世論調査に基づいて、死刑制度に対する日本国民の支持は、実は 政府の主張ほど高くも強固でもないことを示した。自由権規約と拘束力のある国際 規約の下、死刑に関わる義務に日本が従っているのか、また死刑に直面する者たち の権利の保障が死刑に関わる法律と適用によって担保されているのか、いずれも適 切な評価が必要となる。本報告書は、死刑囚を含む日本国民に約束されている権利 と死刑制度の運用実態の間に大きな乖離が存在することを明らかにしている。
本報告書が、日本における死刑制度に関する理解を促し、また死刑制度に関する 議論に関与している政策立案者や人々にとっての指針となることを願うものである。
The Death Penalty Project共同常任理事 ソール・レーフロインド
パヴェーイス・ジャバー 2013年2月
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