る選択議定書がある。前述の通り、国際人権学者たちはこれらが進むべき方向を示 すものであるとの解釈で一致している。すなわち、死刑が最終的に廃止されるまで の間、死刑の適用は制限されるべきであるというものである。 死刑存置が許容されている状況では、死刑の適用そのものが残虐あるいは異常な
刑罰、拷問、又は非人道的な扱いや刑罰となるわけではない。しかしながら、自由 権規約の他の条項に反する状況での死刑適用は、恣意的な生存権の侵害となりうる。 さしあたって特に重要となるのは、公正な裁判を受ける権利と拷問の禁止である。
死刑の適用範囲
自由権規約の第6条第2項は、死刑適用を「最も重大な犯罪」に制限している。 死刑に直面する者の権利の保護を保障するセーフガード14
の第1は、死刑を「人の死
又は非常に深刻な結果をもたらした故意による犯罪」にのみ適用するべきだと強調 している。
規約人権委員会による最近の事例によれば、「最も重大な犯罪」は可能な限り厳
密に解釈されるべきである。死刑廃止が実現するまでの間の死刑適用は、意図的な 殺人という最も重大な犯罪にのみ科されるべきであり、かつ、そうした犯罪に対し て必要的に科されてはならないという有力な議論がある。委員会は、薬物犯罪や経 済犯罪などの人の死という結果を伴わない犯罪に死刑を適用することは規約に反し ており、死刑は適用されるべきではないとしている。フッド教授は、「最も重大な 犯罪」の曖昧な定義を明確にし現代社会に実効性を持たせるには、セーフガードの 第1を「死刑の適用は故意による、かつ最も凶悪な殺人に限り、かつその場合も自 動的に適用されない」と修正し、死刑の適用を制限すべきだと主張する15
。
日本の法律および実務 日本では、2012年現在、死刑の適用が可能な犯罪が19種類あるが、このう
ち、以下の7つの犯罪は、法律上、人の死という結果を伴わなくとも、死刑の適用 が可能である16
。
} 内乱罪(刑法77条) } 外患誘致罪(刑法81条) } 外患援助罪(刑法82条) } 現住建造物等放火罪(刑法108条) } 激発物破裂罪(刑法117条) } 現住建造物等浸害罪(刑法119条) } 爆発物使用罪(爆発物取締罰則1条)
さらに上記のうち、外患誘致罪は、死刑の適用が義務的とされている。 もっとも内乱罪、外患誘致罪、外患援助罪については適用されたことがなく、ま たその他の犯罪についても、死亡者が出なかった場合、実務上、死刑は適用されな い。しかし、日本は、規約人権委員会から、死刑の適用が可能な犯罪の数を減らす よう、繰り返し勧告を受けているにもかかわらず、死刑適用犯罪数を減らすための
14前記注5参照
15 Roger Hood, “Statement to the International Commission against the Death Penalty”(2010年10月)参照。 16それ以外の12罪は殺人あるいは人の死の結果を伴う犯罪行為を含んでいる。
7
Page 1 |
Page 2 |
Page 3 |
Page 4 |
Page 5 |
Page 6 |
Page 7 |
Page 8 |
Page 9 |
Page 10 |
Page 11 |
Page 12 |
Page 13 |
Page 14 |
Page 15 |
Page 16 |
Page 17 |
Page 18 |
Page 19 |
Page 20 |
Page 21 |
Page 22 |
Page 23 |
Page 24 |
Page 25 |
Page 26 |
Page 27 |
Page 28 |
Page 29 |
Page 30 |
Page 31 |
Page 32 |
Page 33 |
Page 34 |
Page 35 |
Page 36 |
Page 37 |
Page 38 |
Page 39 |
Page 40 |
Page 41 |
Page 42 |
Page 43 |
Page 44 |
Page 45 |
Page 46 |
Page 47 |
Page 48 |
Page 49 |
Page 50 |
Page 51 |
Page 52 |
Page 53 |
Page 54 |
Page 55 |
Page 56 |
Page 57 |
Page 58 |
Page 59 |
Page 60 |
Page 61 |
Page 62 |
Page 63 |
Page 64