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序論


第 2 部では、死刑制度に関する日本国民の態度に関する既存の調査結果に関して、 そのまま額面通りに受け取ることができないことを示す。この結論は、主に2つの 分析に基づいている。第1に、死刑制度に関する世論を調査している内閣府による 調査(「基本的法制度に関する世論調査」など、以下では「内閣府世論調査」)の 調査の質を精査し、その結果としてそれらの調査には重大な欠陥があることを明ら かにする。第2に、内閣府世論調査に関する問題点と当該調査から引き出された結 論に関する疑問点を明らかにするために、国民の世論に関して著者が独自で行った 世論調査の結果を紹介する。


内閣府世論調査 内閣府世論調査は、1956年以来ほぼ5年おきに実施されている。最新の調査は


2009年に実施されたものであり、回答者の86%が死刑制度の存置を支持しているこ とが示されている(内閣府2009)。内閣府世論調査の結果は国民の死刑支持の証拠と して長年にわたり採用され、調査結果は政府によって日本が死刑を廃止しない理由 として提示されてきた。


質問形式


内閣府世論調査に関しては、質問の言い回しが死刑支持へ誘導したり死刑支持が 増えるように設定されている、と批判されてきた(菊田2004;日本弁護士連合会 2002)。


2009年の内閣府世論調査の設問:


「死刑制度に関して、このような意見がありますが、あなたはどちらの意見 に賛成ですか。 1. どんな場合でも死刑は廃止すべきである。 2. 場合によっては死刑もやむを得ない。 3. わからない・一概に言えない」


(アンダーラインは筆者)


第2の選択肢である「場合によっては死刑もやむを得ない(86%)」は、第1の選択 肢の「どんな場合にも死刑は廃止すべきである(6%)」よりも選択者が多くなること は、容易に想像がつくことであろう。第1の選択肢に「どんな場合にも」と条件を 設けることで、死刑「廃止派」を狭い意味で捉え、逆に第2番の選択肢は「場合に よっては」及び「やむを得ない」という表現を使うことで死刑「存置派」を広い意 味で捉えようとしているからである。言い換えれば、内閣府世論調査における「廃 止派」は、死刑廃止を確信している人々を指す一方で、「存置派」は死刑存置に対 して熱心な者からから消極的な者まで幅広い層を含む構成になっている。


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