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員会が1998年に指摘した懸念事項に対する取り組みは未だに行われていない。 セーフガードは、自由権規約第6条第6項に示された最終目標である死刑廃止が実 現されるまでの間、死刑を適用しようとするすべての国において適用されねばなら ない、法律上の最低限度の義務を規定したものなのである。


2007年、国連拷問禁止委員会は「とりわけ、未決拘禁に対する効果的な司法的統 制の欠如と、無罪判決に対して、有罪判決の数が非常に極端に多いことに照らし、 刑事裁判における自白に基づいた有罪の数の多さ」に深刻な懸念を表明した。委員 会はまた、「警察拘禁中の被拘禁者に対する適切な取調べの実施を裏付ける手段が ないこと、とりわけ取調べ持続時間に対する厳格な制限がなく、すべての取調べに おいて弁護人の立会いが必要的とされていないこと」にも懸念を示した。


拷問禁止委員会は、被拘禁者の取調べをビデオ録画及びその他の記録手段によっ


て「組織的に監視」するよう勧告した。さらに委員会は、被疑者が取調べの最中に 弁護人とアクセスできるようにすることをも勧告している74


。これらの勧告は、2008


年に規約人権委員会によっても繰り返され、さらに同委員会は、日本政府は「刑事 捜査における警察の役割は、真実を確定することではなく、裁判のために証拠を収 集することであることを認識し、被疑者による黙秘は有罪の根拠とされないことを 確保し、裁判所に対して、警察における取調べ中になされた自白よりも現代的な科 学的な証拠に依拠することを奨励する」べきである75


と勧告した。 規約人権委員会と拷問禁止委員会はともに、代用監獄制度が無罪の推定、黙秘権、


防御権、自己を有罪に陥れあるいは有罪の自白をするよう強要されない権利、そし て拷問又はその他の虐待を受けない権利といった、公正な裁判の基準に違反するも のであるという懸念を示している。


これらの懸念事項への対処がなされない限り、日本は条約上の義務だけでなく、


国際法上の一般的に拘束力ある原則にも、違反し続けることになる。すべての事件 においてセーフガードが守られるよう確保するためには、日本の死刑に関して国際 的な監視機関が下した勧告や決定が、実施される必要がある。


日本の司法は、死刑廃止までの間、国内法が死刑を制限する人権基準と合致する ように解釈されることを確保するという点において、極めて重要な役割を果たし得 る。例えば、恩赦の手続きは司法審査の対象となるといった、世界の様々な国々で の国内裁判所の判例法にみられる近年の潮流は、異なる法制度の間での相互依存性 が高まっていることを示している。またそれは、各国の司法が、現代の国際基準に そぐわない法律を無効化し、死刑事件における公正な裁判と適正手続の保障を、誠 実に尊重しようとする意思の現れでもある。 日本では、2009年の裁判員制度導入に至る数年間の間に、500件以上の模 擬裁判が行われた。模擬裁判の主な目的は、新しい裁判制度の導入によって起こり うる問題を予測すること、並びにこの種の抜本的改革に必然的に伴う複雑な事態に 備えることであった。しかしながら、これだけの大規模な準備にもかかわらず、検 察側が死刑を求刑し、模擬裁判体が生か死かの選択を迫られる模擬裁判は1件もな かった。このことはすなわち、死刑を、根本的に他とは異なる形態の刑罰であって、 それゆえ特別な準備、手続き、保護を必要とするものであるとはみなさないという、 日本人の傾向を表している。この報告書の第1部では、日本の死刑政策及び実務が


74前記の注68参照。 75日本政府報告書審査における規約人権委員会の総括所見(CCPR/C/JPN/CO/5, 2008年12月18日)パ ラグラフ19。


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