た。
「ジャマイカは米州人権条約を批准している。国家は、この様な条約のもとで締約 国として負う義務と合致するよう、できる限り国内法を解釈するべきだという考え 方は十分に確立されている。」20
米州人権条約第4条第6項に基づくジャマイカの義務を踏まえた上で、枢密院は
次のように判断した。 「国家の国際的な義務は、恩赦の権限が公正かつ適切な手続きにより行使されるべ きであり、かつ、そのために司法審査に服するということを示す指針であると思わ れる。」21
Neville Lewis他 対ジャマイカ司法長官事件における決定は、死刑確定者に対す る死刑執行を行うか否かという重大な決断を下す公的機関は、公正さの基本原則を 順守しなければならないという原則を確立し、かつ適用している。自由権規約の第 6条第4項の下で適用される基準がこれと異なるとする理由は何一つなく、したが って自由権規約締約国は、死刑確定者に十分かつ効果的な恩赦の手続きが提供され るよう確保するための措置を講じなければならない。その決断に人一人の生死がか かっている以上、国内法において、すべての場合に適切な恩赦の検討が行われるよ う適切に機能し、透明性のある、公正な制度を規定することが求められる。
日本の法律および実務
日本国憲法73条は、内閣が大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定 すると定める。これを受け、恩赦法により、「特赦、特定の者に対する減刑、刑の 執行の免除及び特定の者に対する復権は、中央更生保護審査会の申出があつた者に 対してこれを行う」ものとされている。 さらに、恩赦法施行規則が手続を規定しており、刑事施設に収容されている者が恩 赦の出願をした場合には、その刑事施設の長が、意見を付して中央更生保護審査会 に恩赦の上申を行う。つまり、刑事施設に収容されている者が、直接、中央更生保 護審査会に対して恩赦の上申を行うことはできない。
死刑確定者に対しても、かつては減刑がなされたことがあった。しかし、37年以 上前の1975年6月、石井健治郎氏が死刑から無期懲役に減刑されたのを最後に、 死刑確定者に対する恩赦は一切なされていない。 これは、日本の死刑制度においては、恩赦はまったく機能していないということを 示している。また同時に、多くの死刑確定者が、死刑執行の恐怖が続く中、何年も の年月を過ごしているということでもある。2013年1月現在、日本には135名の死 刑確定者が存在し、そのうち4名がそうした状況を30年以上にわたって余儀なくさ れてきた(死刑確定者処遇の詳細については次章を参照のこと)。
法律的には、日本の恩赦申請の審査において効果的な手続きが欠けているという
事実は、自由権規約の6条4項あるいはセーフガードの第7のもとでの義務に適合 しないものである。そして実際問題として、1975年以降、一件の恩赦事例もないと いう事実は、死刑に関しては、日本では恩赦制度は消滅しているということを示し
20前記注18の文書のパラグラフ78Fを参照。 21前記注18の文書のパラグラフ79Bを参照。
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