個別面接調査における回収率の低下は、内閣府世論調査に特別なことではなく、 ある程度はやむを得ないものである。内閣府世論調査における真の問題は、有効回 収率が下降していることでなく、特定層における回収率の不均衡を配慮した集計結 果の補正がなされていないことにある。その結果、全体の回答結果には、高齢層の 回答が過大に反映されており、他方、男性及び若年層の回答が過小にしか反映され ていない。2009年の内閣府世論調査では、20歳代の有効回収率が47%であること から、当該層の半数以上(53%)が全体の回答に反映されていないことになる。こ うした点において、内閣府世論調査の結果に疑問が生じることになる。
「大多数の国民の支持は上昇」か?
2009年の内閣府世論調査によれば、回答者の大多数(86%)が死刑制度を支持し ていることになる。これらの調査結果は、日本の政府、政治家、裁判所によって、 日本「国民」の意見として解釈されてきた。調査の回答者のXXパーセントが死刑 制度を支持していると言う場合と、「日本国民」のXX%が死刑制度を支持している 言う場合では、両者の意味が異なる。前者は、調査に回答した人々の意見を記述し た分析であり、後者は回答者の意見に基づいて日本国民の意見を推測した分析であ る。
政府によって実施される大規模な調査は、通常「日本国民の意見」を明らかにす ることを目的として行われるもので、内閣府世論調査もその例外ではない。内閣府 世論調査に基づく現状の分析は、回答者の偏りについて言及されておらず、日本国 民の意見を推測するための補正は行われていない。図3は、過去の内閣府世論調査 における死刑制度に対する態度に関する回答の全体計を、報告書に掲載されている 数字に基づいて整理したものである。図によると、設問の変化に留意が必要となる が、1980年調査から存置派の割合が確実に増え続けていることが明らかである。と りわけ、1994年の調査からは同じ質問が使われていることを考慮すると、存置派の 割合が上昇していることが確実となる。しかし、次の節では、回収率を考慮すると、 揺るぎない大多数が死刑の存置を望むように思われてきたことが明確でなくなくな り、説得力を失うことを議論する。
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