調査Ⅲの結果
調査Ⅲに参加する前と後に、調査Ⅰで実施したと同様の死刑に対する意見を5段 階で回答を参加者に求めた。態度の変化(調査に参加する前と後で異なる意見を選 択97
りの20人の参加者では、11人は廃止の方向に、9人は存置の方向に態度を変えて いた。
3" 事前調査 事後調査
絶対にあ った方が 良い
あった方 が良い
どちらと も言えな い
廃止した 方が良い
絶対に廃 止した方 が良い 合計
絶対にあ った方が 良い 8
5 0 0 0 13
あった方 が良い
2 8 1 2 0 13
どちらと も言えな い 0
5 9 2 0 16 0 2 0 4 1 7
廃止した方 が良い
絶対に廃止 した方が良 い 0
0 0 0 1 1 合計 10 20 10 8 2 50 統計的に顕著な結果が得られた調査Ⅱに比較すると、調査Ⅲの対象者は小規模で
ある(N=50)。しかし、2つの点が注目に値する。参加者の大多数は、審議後も死 刑に関して意見を変えなかった。意見を変えた参加者の場合も、全員が同じ方向に 意見を変えたわけではない。廃止の方向に変わった者もあったが、廃止と存置の方 向に意見を変えた者の割合もほぼ同じであった。次のセクションでは、死刑に対す る態度に関して審議がもたらした影響を質的に分析する。調査Ⅲの事後に行われた 電話インタビューから得られた発言に含まれた言葉を用いて、死刑に対する一見確 固と思われる意見の内容を検討した。
調査後のインタビューにおいて、断固とした廃止派(調査参加の前後とも「絶対 にあった方が良い」を選択)であった参加者は、「死刑の執行は、国家によって犯 される殺人の繰り返しである」98
)に注目したところ、50人の参加者のうち30人は態度を変えていなかった。残
と述べていた。しかし同参加者は、審議後のアンケ
ート調査において、もし裁判員に選ばれたとしたら死刑宣告を下せるかという設問 に対四して、「わからない」と答えていた。死刑に対して一貫して強固な反対意見 を持つ人がこのような答えをすることに驚かれるかもしれないが、調査後のインタ ビューで、「凶悪犯罪に直面したら、感情に影響されて被告人に死刑宣告を望むか もしれない」とこの参加者はアンケート調査にみられた矛盾を説明した。同参加者 は、死刑は感情とは別問題であるという意見を持ち続け、国家であっても人の命を
97 例えば、 「絶対にあった方が良い」から「あった方が良い」に、また「あった方が良い」から「廃
止した方が良い」に意見を変えた回答者は、態度を変えたとした。 98 参加者の発言からの引用はすべて、文法的誤りを訂正し間投詞を省略するなど、意味が変わらない ように校正してある。
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