要旨
本報告書は、日本の死刑制度に関して二つの観点から考察する。一つ目は、国際人権法で守られている 人権の基本原則に基づいた、死刑制度に関する原理論的なアプローチであり、二つ目は国民の多くが死刑 を支持していることが死刑廃止の障害となっている、という議論について批判的に分析するものである。
本報告書の第1部では、日本が1979年に批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約) 及び1984年国連で採択された死刑に直面する者の権利の保護を保障するセーフガードの下での日本の義務 と、日本における法律及び実務の間に顕在する乖離に焦点を当てる。改革に向けて下記のような多くの提 言を行っている。
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殺害の故意を伴わない犯罪を死刑適用の対象から除外する。
代用監獄制度を廃止し、公判前の拘禁に効果的な司法的統制を行う制度を導入するとともに、 その期間を大幅に短縮する。
事実審及び上訴審における手続的保障を強化する。
死刑を言い渡されたすべての者に、再審請求段階を含むすべての段階で法的援助を提供することを 含め、効果的かつ強制的な上訴の権利を与える。
公正かつ機能的な恩赦手続きへの全面的なアクセスを提供する。 再審又は恩赦の請求手続が係属中の事案は、死刑を執行しない。 死刑確定者の拘禁環境及び処遇を改善する。
本報告書の第2部では、内閣府の世論調査に見られる死刑に対する「国民の強い支持」と、より精緻な 世論調査を行うことによって明らかにされた死刑制度に関する国民のより複雑な感覚との間の相違点につ いて明らかにする。そこでは下記の点が議論されている。
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内閣府世論調査は、方法論的に深刻な問題がある。従って政府は内閣府の世論調査で明らかにされ た世論が、表層的な意見であることを認識するべきである。
• 三つの独自の調査によって明らかになったことは、日本国民の相当数が死刑制度に関して揺らぎの ない、あるいは確固とした意見を保持しているわけではない。
• 死刑存置を強く支持する者は、新たな情報を提供されることで、死刑制度に対する意見を変える場 合が多い。
• 死刑制度とその抑止力について、その効果を信じる世論を鵜呑みにするのではなく独自の学術的な 調査が必要である。
要するところ、本報告書は、日本政府及び司法が死刑制度の完全廃止に先立ち、現状の問題点について 早急に改善する必要があることを示している。
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