いくつかの国際人権機関は緩やかな時間制限を採用している。例えばFox, Campbell 及びHartley31
事件について欧州人権裁判所が、被疑者たちの逮捕理由が告知された のが拘束後数時間経ってからであったことは欧州人権規約の違反には当たらないと したし、いくつかのカリブ海諸国の憲法はさらに緩やかな24時間又は48時間とい う時間制限を(少なくとも規定の上では)採用している。
弁護人へのアクセス 弁護人との早期のアクセス、より具体的には尋問の前に弁護人と連絡することに
ついて、国際人権法の基準はさらに厳しいものとなっている。国連の弁護士の役割 に関する基本原則32
; の第1は、刑事訴訟において取調べを含めたあらゆる段階で弁護
士による援助を受ける権利を規定している。また、欧州人権裁判所は、黙秘権(あ るいはより正確には尋問中の沈黙から不利な推測をされないこと)に関連して、弁 護士が同席しない状況での被疑者尋問を禁止した(Murray対イギリス事件33 Condron対イギリス事件34
においても支持)。
同様に、規約人権委員会は「逮捕された者は、ただちに弁護人にアクセスできな ければならない35
。 」と強調してきた。米州人権委員会は、防御権には、訴追を受けた
者が最初に拘禁された時点で法的援助を受けることが許可されねばならないとの要 請が含まれると述べている。そして、被拘禁者の拘束中及び尋問中の弁護人とのア クセスを禁止する法は、防御権を著しく侵害するものであると結論づけている36
さらに拘禁者と弁護人のやりとりは秘密でなければならない。S 対スイス事件に おいて欧州人権裁判所は下記のように述べている。
「被告人が第三者に聞かれることなく弁護人とやりとりする権利は民主主義社会 における公正な裁判の基本的要請のひとつである。もしも監視されることなく弁護 人が被告人と打ち合わせたり、秘密の指示を受けることができないのであれば、弁 護人の援助はほとんど意味のないものになってしまう。」37
欧州人権裁判所は、例えば被告人と弁護人の間で通謀の恐れがある場合などには
秘密性が制限され得ることを認めている。ただし、単に弁護人と共同するおそれが あるだけでは制限は認められない。
日本の法律および実務
1. 日本の刑事訴訟法第203条第1項は、「司法警察員は、逮捕状により被疑者 を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、 直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁 解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、
31前記注29参照
32第8回国連犯罪防止並びに犯罪者処遇会議(コングレス)にて1990年9月7日採択 33 [1996]22 EHRR 29 34欧州人権裁判所No.35718/97. 35 UN Doc. CCPR/C/79/Add.74,9th April 1997 36米州人権委員会年次報告書(1985-86年) 37 (1992)14 EHRR 670 at[48]
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