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証拠開示 証拠開示の権利を明文で規定している国際文書は少ないが、一貫して、一般的な


公正な裁判を受ける権利及び第14条第3項(b)に示された防御準備のための十分 な時間及び便益を与えられる権利のなかに読み込まれてきた。その典型はEdwards 対イギリス事件59


における欧州人権裁判所の判断である。


「検察当局が弁護側に対し被告人に有利な証拠も不利な証拠もすべて開示するとい うのは[第6条に基づく]公正さが要求するところであり、開示が行われない場合、そ れが裁判手続きの欠陥を引き起こす[可能性がある]。」


被告人に有利になる可能性のない証拠を弁護側に開示しないことは、公益を理由


とする責任の免除として許容されるが、そのような手段は「厳密に必要」とされて いる場合にのみ許容されるものである(Van Mechelen対オランダ事件60 Davis対イギリス事件61


)。 日本の法律および実務


2005年,「公判前整理手続」が新設されたのにともなって、同手続に付された 場合の証拠開示規定も新設された。これによって、証拠開示手統は「公判前整理手 続」に付された事件での制度と、それ以外の事件における従前の制度との二制度と なった。


殺人事件は、通常、公判前整理手続に付されるが、新設された証拠開示制度も、 検察官手持ち証拠の全面開示を要求するものではなく、公正な裁判を受ける権利、 とりわけ規約第14条第3項(b)が規定する「防御の準備のために十分な時間及び便益」 を与えられる権利に適合するものではない。結果的に、日本の弁護人らは、死刑の 求刑がなされうる事件においても、相手方である警察及び検察と比較して非常に大 きな情報格差がある状況で弁護をしなければならないのである。


法的援助 米州人権条約第8条第2項のもとでは、選任された弁護人の費用を国が負担する


のは国内法で定められている場合に限られる。しかしながら米州人権委員会は、公 正な審理を確保するために弁護人が必要とされる場合には、費用負担の能力がない 被告人に、国が無料で弁護人を提供しなければならないとしている(勧告的意見、 1990年8月10日)。62


弁護士の役割に関する基本原則の第3は、貧困な人々に対して法的援助を提供す


59 (1993) 15 EHRR 417 60 (1993) 15 EHRR 647 61 (2000) 30 EHRR 1 62 OC-11/90


23 及びRowe and


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