すべての国には、自由権規約第9条第3項及び第4項が有効に作用するために、 これらの条項に規定された司法的統制が利用可能であり、かつ効果的であることを 確保する義務がある。警察での留置及び未決拘禁に関する基本原理とは、身体的自 由への制約は例外的なものであり、また自由の剥脱の合法性についての最初の司法 的統制は、可能な限り速やかに行う必要があるということである。ここで考慮され る期間の始期とは実際の逮捕時点であり、最初の裁判官面前引致は可能な限り速や かに行われなければならない。
最初の司法的統制の目的とは、拘禁の合法性を審査し拘禁中の処遇に問題がない か確認するためだけでなく、ひどい取扱い又はその危険性を避けるため、被告人を 改めて勾留するべきかどうかということも含まれる。これは、(裁判官の面前へ引 致後の)勾留は、捜査に責任を持つ機関とは別の当局の下にある施設で行われなけ ればならない、ということを意味する。国連の拷問その他の残虐な、非人道的なも しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰に関する特別報告者は、次のように述べ ている。
「逮捕された者を、起訴前勾留のための司法官憲による令状を得るための法定の期 間を超えて、取調官ないし捜査官の管轄下にある施設に拘禁してはならず、その期 間はいかなる場合も48時間を超えてはならない。彼らはその後ただちに別の当局が 管轄する未決拘禁施設に移送されねばならず、それ以降は取調べ官ないし捜査官が 監督を受けることなく接触することは許されない。」44
日本の法律および実務 刑事訴訟法第203条によって、「司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕し
たとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、・・・留置の必 要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に書類及 び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。」
被疑者を警察官から受け取った検察官は、被疑者を勾留する必要があると思料す る場合には、24時間以内に、裁判官に勾留状を請求しなければならない。したが って、被疑者の逮捕から勾留請求までの時間は、72時間以内ということになる。
問題は、裁判官が被疑者の勾留を決定した後である。刑事収容施設及び被収容者 等の処遇に関する法律では、被疑者は法務省の管轄下にある「刑事施設」に勾留さ れることとなっている。しかし、正式な「刑事施設」に被疑者を勾留できない事情 がある場合には、同法は、警察留置場を代替として使用することを認めている。こ れがよく知られた日本の「代用監獄制度」である。実際問題として、ほぼすべての 事案において、被疑者は、逮捕後に留置されていた警察の留置場に送り返される。 したがって、日本の刑事司法では、代替収容が標準となってしまっている。これは、 被疑者の勾留と取調べの双方を行う同じ警察の管轄下に被疑者を置くものであり、 危険な制度である。多くの識者が、代用監獄制度は虚偽自白の温床だと指摘してい る45
。こうした手法による虚偽自白の獲得は、1980年代に再審によって無罪が確
44 Report to the Commission on Human Rights, E/CN.4/2003/68, paragraph 26(g) 45最も古典的な研究は、五十嵐二葉「現代日本の犯罪、自白と支配」
(
「世界」1984年2月)である。 17
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