は用意されていない。例えば、「仮釈放の無い無期刑がない」(好ましい死刑に代 わる刑罰が無いがため、死刑を受け入れざる終えない)、又は「日本の現行の刑法 では、死刑が最も重い罰則である」(凶悪な犯罪者は法律上最も厳重な刑罰を受け ることが重要だが、死刑そのものにこだわっている訳ではない)等が考えられる。 このような消極的な選択肢が設けられれば、「存置派」のかなりは、死刑を「望ん でいる」のではなく、「容認している」という姿が浮かび上がるかもしれない。要 するに、内閣府世論調査による「存置派」は、死刑制度を積極的に支持する者だけ でなく「消極的」に支持する者を含むものであるが、その一方で「存置派」に対し て尋ねている死刑支持の理由の選択肢は、積極的な死刑存続支持の立場に偏ったも のとなっている。
サンプル・バイアス(回答者の偏り)
過去9回実施された内閣府世論調査は、すべて同じサンプリング方法を用いて実 施されている。層化2段無作為抽出法に基づいた全国調査である(内閣府 1956;1967;1975;1980;1989;1994;1999;2004;2009)。各回の標本は、日本人の20歳以 上の男女で構成されており、調査の実査は社団法人中央調査社や新情報センターに 委託されている。
有効回収率が充分に高くない場合、標本抽出方法によっても国民全体の意見を反 映する標本結果が得られるとは限らない(山内2004;安田・稲葉2008)。偏りのあ る標本を分析しても、信頼できる結果を得ることはできない。従って、内閣府世論 調査の標本抽出法が優れたものでも、調査への回答者が日本国民を代表していると 判断するためには、有効回収率を検討することが必要となる。
図1と図2は、過去9回の内閣府世論調査における有効回収率の変化を表してい る。図1は、有効回収率の変化を男女計と男女別に表したものである。この図によ ると、男女計では1956年が有効回収率が85%と最も高く、その後は低下傾向にあ り、2009年では65%まで下降している。男女共に回収率が下降しているが、男性の 方が女性よりも回収率が低く、全体を通して男性は女性と比べて回答率が10%ポイ ントほど低い。
図2は、年齢階層別の有効回収率を表しており、全体的に下降傾向にあることが わかるが、年齢階層別では重要な相違がある。第1に、高齢者層は回収率が一貫し て高く、特60歳以上の回収率が最も高く、20歳から29歳層で回収率が最も低くな る。20歳から29歳層は回収率の低下幅が最も大きく、1967年調査では73%であっ たが、2009年調査では26%ポイントも低下し、半数以下の47%である。第2に、 年代階層別による回収率の格差が、高齢者層と若年者層の間で広がりつつある。例 えば、2009年調査では60歳から69歳層では回収率が76%であったのに対し、20 歳から29歳層では回収率が47%であった。
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