以上のように有効回収率は重要な問題である。なぜならば、回収率が低い場合、 集計結果の信頼間隔の幅が広がり、存置派の比率の信頼度が低くなるからである。 内閣府世論調査の分析には、回答者の偏りに対する補正が必要である。あるいは、 集計結果に関して少なくとも偏りがあることをことを認識しなくてはならない。
データの利用
内閣府世論調査のマイクロ・データは公開されていないため、研究者がマイク ロ・データの再分析を行うことができない。我々が利用できるのは、政府が公開し ている集計結果のみである82
。日本では、世論調査は統計法上の統計ではなく、また
日本にも東京大学社会科学研究所が運営しているSSJデータアーカイブが存在する ことから、日本政府として内閣府の世論調査のマイクロ・データを2次分析に利用 可能な形で公開することができる。日本政府が、世論調査の結果を死刑制度の存置 の根拠とするのであれば、データを研究者に公開し、その透明性の担保が不可欠と なろう。
3つの調査の結果
調査方法 2008年から2010年にかけて著者は、日本で3つの独立した実験的調査を実施し た。これらの調査は、内閣府世論調査とは別の、できるだけバイアスの少ない設問 を使って死刑制度に対する日本国民の態度を測定することで、内閣府世論調査への 反証となる結果を提供すると同時に、内閣府世論調査における設問の質について実 証的に検証することを目的とした。
1番目の調査(以下、調査Ⅰ)は、大規模なオンラインアンケート調査(N=20,769 人) を、調査会社の登録パネルを対象に実施した83
。オンラインアンケート調査とは、
調査会社の登録パネルを対象にオンラインで実施される調査を意味する。従って、 標本台帳から抽出された調査対象者に対して実施されるオンライン調査とは異なる。 日本におけるオンラインアンケート調査の利用は、最近では、主に市場調査を行う 民間企業から、個人調査を実施する政府機関や学術機関にまで広がってきている (本多2006:32)。本調査のパネル(調査対象者の選定対象)は、調査実施時点で 681,991人から構成されていた84
。
82 この点に関して英国との比較が可能である。例えば、イギリス内務省が実施している英国犯罪調査 のマイクロ・データは、英国のデータアーカイブであるUKDAを通して公開されている。日本の内閣 府のいくつかの局が実施している世論調査のかなりの数のマイクロ・データが、SSJデータアーカイブ に寄託され、研究者が2次分析に利用可能となっている。さらに、内閣府の1967年の死刑に関する世 論調査のマイクロ・データは、SSJデータアーカイブから入手可能である。内閣府が実施てしいる世論 調査のマイクロ・データの一部が、アメリカに提供されたことがあり、それを再分析可能な形に三宅一
郎氏が整理したことによって日本でも利用可能となっている。 83 この調査はインテージが運営 によって実施された(
http://www.intege.co.jp/net/)。; 84 インテージに登録された対象者は高齢者の割合が低いため、20歳から49歳までの男女から調査対
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