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2番目の調査(以下、調査Ⅱ)では、調査Ⅰの調査対象から2つのサブグループ (実験群と統制群)を抽出して実験的調査として実施した85


。実験群と統制群の2つ


のサブグループのぞれぞれは、調査Ⅰにおいて死刑制度に関する態度である存置派、 廃止派、「わからない」の回答者が、それぞれ同数になるように構成した。2つの サブグループのうち一方のグループである実験群には、死刑制度に関する情報を提 供した。その上で、両グループに同じ設問に回答してもらい、死刑制度に関する情 報提供がどのように影響したか比較した。調査では次の7項目の情報について、そ れぞれどれだけ事前に知識があったかを調べる設問を行った。


・ 死刑廃止に関する国際的な動向 ・ 死刑と犯罪率の関係 ・ 死刑における冤罪の可能性 ・ 死刑執行の方法 ・ 死刑に関する情報公開 ・ 殺人事件数の動向 ・ 無期刑から仮釈放になる可能性


3番目の調査(以下、調査Ⅲ)は、量的調査と質的調査の両方法(本章では審議 型意識調査と呼ぶ)を利用し、死刑の存置支持における審議の役割を調べた86


者は、日本の死刑制度について学ぶために集まり、この問題に関して討議し、意見 を交換し、また事前と事後に実施した調査に回答し、さらに調査後には電話インタ ビューが行われた。この調査では、人々が新しい情報をどのように理解し、解釈す るかについても把握することを意図して考案された。


調査対象者は、日本人50人(首都圏87 に居住する20歳から58歳の男女50名(男


性25名、女性25名)で、東京を拠点とする市場調査会社(調査Ⅰと調査Ⅱで使わ れた企業とは異なる)の登録モニターから選定された88


。調査対象者は、性別、年齢、


死刑に対する態度によって層別無作為抽出された。死刑に対する態度による参加者 の選定では、調査Ⅰの調査結果に基づいて、おおよそ存置派が多数で、廃止派が少 数となるようにした。死刑制度に対する態度の偏った分布をそのまま生かして「小 日本社会」を設定したため、存置派と廃止派が同数になるような「ディベートコン テスト」とは異なる。調査対象者を4つの討議グループに分けた。参加者間の討議 が活発になるように、どのグループにも廃止支持者が最低2人含まれるようにした。


。参加


象者を選定するように依頼した。調査対象者(N=20,769)は、パネルを性別、年齢階層別に階層化して ランダムに選択した。調査対象者の性別及び年齢階層別の分布を、総務省統計局「人口推計」(2008年) と比較した。両者の分布は近似していたが、標本バイアスを最小化するためにウェイトを作成し、集計


結果を補正した。以下の分析は、ウエィトで補正したデータによるものである。 85 2つのグループである実験群と統制群のそれぞれ(各々はN=542人)を、調査Ⅰから層化したのち に抽出した。具体的には、独立変数である性別と年齢に加えて、従属変数である死刑に対する態度に基 づいて層化し、それからランダムに2つのグループである実験群と統制群に割り当てた。2つのグルー プの比較可能性を高めるために、性別と年齢だけでなく、実験を行う前に測定した死刑に対する態度を


含めて抽出した。 86 審議型意識調査は、佐藤舞、本庄武(一橋大学)


、木村正人(高千穂大学)


4名の研究者によって実施された。 87 首都圏は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県である。


88 市場調査会社は、IRC(http://www.i-rc.co.jp/index.html)で、約75,000人の登録モニターをかかえ、 年2回登録情報を更新している。


40 、前島知子(法務省)の


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