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るため十分な資金その他の資源を用意するよう国家に要求している。 規約人権委員会は、自由規約の締約国は、規約上の権利の侵害の申し立てについ


て憲法裁判所での救済措置を可能かつ効果的なものにする義務を負うとしている。 Rawle Kennedy対トリニダード・トバゴ事件において、規約人権委員会は、公正な 裁判を受ける権利が侵害されたという憲法上の申立てを行うための法的援助を与え なかったことは、自由権規約第2条第3項と併せて読むことで規約第14条第1項の 違反になるとした。


「規約は、いかなる国家であれ、すべての事件の当事者に対して法的援助を提供す る義務があるとは明記しておらず、刑事事件において司法の利益のために必要とさ れる場合にのみ、国がそのような義務を負うとしている(第14条第3項(d))。 さらに委員会は、憲法裁判所の役割が刑事事件そのものにつき判断することではな く、被告人が公正な裁判を受けられるよう確保することにあるということも認識し ている。締約国には、規約第2条第3項に基づき、規約上の権利の侵害の申し立て に関して、憲法裁判所での救済措置を可能かつ効果的なものにする義務がある。通 報者は、公正な裁判を受ける権利が侵害されたとの申し立てを憲法裁判所に行うに あたり、何らの法的援助も利用できなかったのであり、委員会は、この法的援助の 拒否が規約第2条第3項とともに規約第14条第1項の違反であるとみなす。」63


日本の法律および実務


日本では、国選弁護人は、裁判官が勾留を決定した段階以降において選任される。 したがって、逮捕から勾留までの間は、資力のない被疑者は弁護人がつかない可能 性が高い。さらに、国選弁護人は、被疑者に対しては死刑、無期もしくは長期3年 を超える懲役もしくは禁錮にあたる犯罪についてのみ選任可能なため、軽微な罪名 の場合には選任されない。しかし、たとえば重大な殺人事件の被疑者が、まずは軽 い死体遺棄の罪で逮捕されることは、よくあることである。このような場合、当初、 死体遺棄で逮捕・勾留された被疑者には、国選弁護人が選任されない。


また、刑がいったん確定すると、再審請求を行う場合であっても、法律扶助制度 は利用できない。したがって、弁護士費用が払えないために、再審請求を断念する 死刑確定者も少なからず存在する64


。 さらに、2010年に日本弁護士連合会が当時存在した110名の死刑確定者全員に対


して第2回目となるアンケート調査を行った際、24名の死刑確定者が再審請求をし ていないと答え、うち6名がその理由を弁護士費用が支払えないためであると回答 した65


。自由権規約第14条に規定される公正な裁判の最低限の保障は、上訴後の手 続にも妥当するものであり、再審に対して法的援助が提供されないことは、規約第 14条第3項(d)及び第14条第5項の要請に反するものである(次節参照)。


より一般的には、日本の死刑事件弁護の質はまだまだ改善を要するものであり、 これは、刑事訴訟上の諸規則が警察・検察側に多くの有利な事項を定めているため


63前記の注41の委員会の見解のうち[7.10]を参照。 64 Shinomiya Satoru, “Criminal Legal Aid in Japan: Past, Present and Future”, paper presented at the conference on Criminal Legal Aid in the World, at China University of Politics and Law, Beijing, December 15-16, 2012, pp.1-


16. 65 http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/publication/data/shikei_syoguu_enquete_a2.pdf


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