SAN DIEGO YU-YU
JULY 16, 2012
39
市民が築いた
「音楽の都」
楽しむ情熱脈々と ドイツ・ライプチヒ
バッハ、メンデルスゾーン、シューマン、ワー グナーら、数々の音楽家が活躍したドイツ東部 のライプチヒ。市民が築き上げた を訪ねた。
民主化の起点
フランクフルト空港からライプチヒに直行す る特急に乗った。車窓の外に続く緑が鮮やか だ。終点のライプチヒ中央駅は、
構内に広がるショッピングモールが、メッセ
欧州で最大級。 (見
本市)で栄えた商業都市としての面影を残す。 中央駅の前を走る環状道路の内側が市の中 心部。その中に立つニコライ教会は商人の神を 祭っている。シュロの木をかたどった柱が淡い ピンクや緑で彩られ、パイプオルガンの音色が 響き、澄んだ空気が漂う。1980年代、ここで 毎週月曜に開いていた平和を祈る集会が、89 年秋に民主化要求デモへと発展。ベルリンの 壁の崩壊へとつながっていったのだ。 民主化運動で、デモ隊と当局側の仲介に立っ たのが、世界屈指のゲバントハウス管弦楽団で カペルマイスター(音楽監督)を務めていた指 揮者クルト・マズア氏だった。 楽団が拠点とする
「ゲバントハウス」は、ニ
コライ教会から徒歩約5分。マズア氏の働き 掛けで81年に誕生した3代目のコンサートホー ルだ。 楽団のルーツは1743年、商人16人がコン サートを開いたことにさかのぼる。
市民オーケストラが生まれたのです」。楽団の
「音楽の都」
コンビニの壁に描かれたバッハ=ドイツ・ライプチヒ ハ全集」が発行され、 世に広まったと指摘する。
ボルフ氏は若手研究者と共に、史料の発掘 や手書き史料のデジタル化を進め、
「新バッハ
全集改訂版」の編さんに取り組む。町の歴史 と音楽を楽しむ情熱は、次世代へと受け継が れていく。
(共同)
旧市庁舎前の市場=ドイツ・ライプチヒ 「世界初の
アンドレアル・シュルツ総支配人が胸を張る。 81年、コンサート会場は宿屋の裏部屋から 織物商人の会館「ゲバントハウス」内のホール に移り週2回の定期公演を開始。モーツァルト らが出演し、市民が客席を埋めて楽団をもり立 てた。 1835年にはメンデルスゾーンがカペルマイ スターに就任。「ベートーベンやワーグナーら の名作をこの楽団が初演したのです」とシュル ツ氏は言う。その後2代目ゲバントハウスがで きたが第2次世界大戦で破壊され、3代目が 建てられた。
礎造ったバッハ
ホールから西へ向かうと、旧市庁舎前の広場 は青空の下、
野菜や生花の市でにぎわっていた。
広場を過ぎると間もなくトーマス教会に到着。 1212年に少年合唱団が発足し、800周年を 迎えた今も9〜18歳の約1,100人の団員が 寮生活を送りながら鍛錬を重ねる。 教会の前には、教会のカントル(音楽監督) を務めたJ・S・バッハの像がそびえる。バッハ は少年合唱団を指導したほか、市参事会(議会) の下で作曲活動を続け、演奏会を開き多様な 音楽を市民にもたらした。頻繁に開かれるメッ セのたび、世界中から集まる商人らをもてなす 演奏会も任された。
「音楽の都」の礎を造った
特産であるソーセージの専門店=ドイツ・ライプ チヒ
のだ。 向かいに構えるバッハ博物館で、直筆の楽
演奏者が集まるトーマス教会前のバッハ像=ドイツ・ラ イプチヒ
譜などバッハの幅広い業績に触れることができ る。同じ建物の階段を上ると、本人も演奏した バッハ財団の広間が現れた。この日は学生らが チェンバロなどの古楽器で室内楽を練習中。ま ろやかな音色が郷愁をそそった。 バッハ財団のクリストフ・ボルフ氏は、バッハ の作品が今も愛される理由の一つに
「メンデル
スゾーンやシューマンが再発見したこと」を挙 げる。さらに18、19世紀にライプチヒが出版 業で栄えていたため、楽譜をまとめた
「旧バッ
古楽器を使って室内楽を練習する学生ら= ドイツ・ライプチヒのバッハ財団
ゆかりの場で生演奏
ライプチヒでは旅行者も、さまざまな場 で生演奏を聴くことができる。 ゲバントハウス管弦楽団は、音響に定評 のあるゲバントハウスで定期的にオーケスト ラや室内楽の演奏会を開催。ライプチヒ歌 劇場では同楽団の演奏でオペラやバレエな どが上演されている。 名作曲家にゆかりの場で音楽に触れたい 人は、メンデルスゾーンハウスやシューマン ハウスへ。それぞれ日曜の定時に演奏会を 行っている。トーマス教会の礼拝で、少年 合唱団や楽団の宗教音楽を聴きながらバッ ハの世界に浸るのも一興だ。 それぞれ前売りチケットが必要な場合 があるので、ホームページなどで事前に確 認を。
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