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SAN DIEGO YU-YU


APRIL 1, 2012


65


Medical


アメリカ健康ノート


第139回  運動の効果


(Effects of Exercise)


 運動の健康に対する効果については多くの研究 で証明されてきています。運動しない人は、運動 する人に比べて寿命が短く、いろいろな生活習慣 病になる確率が高く、健康を維持するのに困難を 生じやすくなります。健康に生きることにとって、 いかに運動が大切かということを、アメリカ政府の 機関が最近発表した推奨に基づいて解説します。


運動の効果


 運動をすると、以下の病気のリスクを下げるこ とができます。早期死亡、冠動脈心疾患 (狭心症、 心筋梗塞)、脳卒中、高血圧、高脂血症、2型糖尿 病、メタボリックシンドローム、大腸がん、乳が ん、体重過多、体重減少、うつ病。それに心肺機能、 筋肉系の機能を改善します。高齢者の認知機能障 害の予防にもなります。他に、大腿骨頚部の骨折、 肺がん、子宮体がん、骨粗しょう症、不眠などの 予防や改善に役に立つと考えられています。  1週間に7時間運動する人は、ほとんど運動しな い人に比べて、早期死亡や比較的若くして死ぬ確 率を4割も下げることができます。  以下、運動による効果を個別に解説しましょう。 ◆心肺血管系に対する効果  心臓、肺、血管に対する運動の効果は最も研究 されていて、


例えば、 中程度以上の運動をする人は、


心筋梗塞などの心血管系のリスクを著明に下げる ことが分かっています。1週間に2時間半以上運動 することが必要ですが、3時間以上運動すると、さ らにリスクを下げることができます。 ◆代謝系に対する効果  運動をすると、2型糖尿病、高脂血症、メタボ リックシンドロームなど代謝系の病気の予防にな ります。


また予防だけでなく、


定時間リズミカルに動かすことで、早足歩行、自転 車走行、野球、ダンス、水泳などの運動を指します。 有酸素運動は心臓血管系を強く健康にします。有 酸素運動は1回につき最低10分以上続ける必要が あります。 ✱筋力増強運動 ―― 身体のいろいろな筋力を増強 する運動で、ダンベル、エキスパンダー、腕立て 伏せ、腹筋運動、懸垂などで、四肢、腰、胸、腹部、 肩などの主な筋肉群を鍛えます。この運動は筋肉 だけでなく骨も強くします。筋力増強運動は週に最 低2回行いますが、毎週の運動時間 (有酸素運動) には含めません。 ✱柔軟体操 ―― 柔軟体操は、有酸素運動や筋力増 強運動の前のウォームアップとして行ってもかまい ません。関節や筋肉の柔軟性は、運動を行う上で 事故の予防などでも重要です。


運動の行い方


 まず1週間で2時間半、中程度の運動を行うの が目標です。激しい運動であればその半分の時間 でかまいません。ここでいう「運動」とは有酸素運 動のことを指しますので、筋力増強運動はこの時間 には含めません。  運動量は1週間単位で考えるので、毎日行う必要 はありませんが、週に3日は運動を行ってください。 平日が忙しければ、月曜日と水曜日は各20分程度、 週末に2時間というやり方でもかまいません。1回 当たりの運動は、


最低10分間は行う必要があります。 すでにそれらの代謝・ 金 一東 日本クリニック・サンディエゴ院長


日本クリニック医師。 神戸出身。岡山大学医 学部卒業。同大学院を経て、 横須賀米海軍病 院、宇治徳洲会等を通じ 日米プライマリケア を経験。その後渡米し、 コロンビア大学公衆 衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、 内科・小児科合併研修を終了。 スクリップス・ クリニックに勤務の後、現職に。 内科・小児 科両専門医。


内分泌系の病気に対してもコントロールを良くし ます。 ◆筋骨格系に対する効果  筋肉、骨、関節は身体を支え、身体を動かしま す。そして、それらの機能が落ちると、日常生活 上での様々な身体活動ができなくなってしまいま す。筋骨格系が衰えると運動もできなくなるので、 さらにそれらの運動機能は低下します。運動をす ると、骨粗しょう症の予防にもなります。大腿骨頚 の骨折も運動している高齢者には少なくなります。 また、運動機能の向上により、加齢によるケガや 事故の予防にもなります。 ◆がんに対する効果  運動をする人は、しない人に比べて大腸がんに なる確率が下がります。女性では、運動している 人は乳がんになる確率が低くなります。そうした がんの予防効果は、1週間に3時間半から7時間、 中程度の運動をする必要があります。子宮体がん や肺がんに対する予防効果の可能性も報告されて います。 ◆精神面の健康  運動をすると、うつ病や認知機能低下のリスクを 減らします。また、熟睡できる確率が高くなります。


運動の種類 ✱有酸素運動 ―― これは、身体の大きな筋肉を一


 それが達成できれば、中程度の運動を1週間で5 時間行うのを目標にします。激しい運動であれば、 その半分の時間でかまいません。  運動は、スポーツだけではなく、階段の上り下り、 歩行、庭仕事でもかまいません。身体を動かす仕 事をしている人 (庭師、建築労働者など) は、仕事 で身体を動かしている時間も運動時間に含めるこ とができます。  今まで全然運動を行ったことがない人は、まず 歩くことから始めてみましょう。最初は1回5分の 歩行でもかまいません。それを1週間で5〜6回 行います。それができれば歩行時間を延ばします。 また、徐々に歩く速度も上げていきます。高齢の人 で1週間2時間半の運動ができない人は1時間で もかまいません。できる範囲で行ってください。  運動はいきなり始めないで、ウォームアップをし て、徐々に運動できる状態にします。そして運動 はクールダウンをして終えて、元の身体状態に戻 します。


運動の程度


◆中程度の運動 (運動を行いながらしゃべることは できるが、歌は歌えない程度の運動)。  例:早足歩行 (1時間で3マイル=4.8キロ程度 の速度)、水中エアロビック、自転車走行 (1時間で 10マイル=16キロ以下の速度)、ダブルのテニス、 社交ダンス、一般的な庭仕事など。 ◆激しい運動 (息をつかない限り、2、3語以上の単 語が言えない程度の運動)  例:競歩、ランニング、水泳、シングルのテニス、 エアロビックダンス、時速10マイル以上での自転


車走行、なわ跳び、激しい庭仕事 (穴を掘ったりす る作業)、登山や重いバックパックを背負ったハイ キングなど。


運動のレベル


 有酸素運動のレベル (程度) を知るのに、絶対的 レベルと相対的レベルがあります。絶対的レベルと いうのは1分当たりのエネルギー消費量ですが、軽 い運動は休息時の1.1倍から2.9倍のエネルギーを 消費します。中程度の運動は3.0から5.9倍程度の エネルギーを消費し、激しい運動というのは6倍以 上のエネルギーを消費します。  相対的レベルというのは、ある運動をするのに必 要な努力のレベルのことで、


0から10までのスケー


ルを使い、座っている時を0、最も激しい運動時を 10と定義します。すると、中程度の運動は5か6、 激しい運動は7か8になります。


運動によるリスク


 健康に良い運動も、行う人の年齢、心臓病や他 の内科疾患の有無、筋骨格系の疾患の有無、運動 量などによって様々なリスクをもたらすことがあり ます。最も多いリスクは筋骨格系の事故ですが、こ れにはねんざ、筋肉痛、関節痛、腰痛、骨折などが あります。狭心症、心筋梗塞、喘息 (ぜんそく) 発 作、脱水、日射病などの疾患も起こる可能性があり ます。ただ、運動による健康に対するリスクは、運 動をしない時のリスクに比べてはるかに少ないと考 えられています。


運動を始めるにあたっての注意


 心筋梗塞、狭心症などの心疾患の既往のある人、 それ以外にも糖尿病、高脂血症、高血圧などの生 活習慣病、慢性肺疾患などのある人は、運動を行 う前に医師に相談してください。虚血性心疾患の可 能性の高い人はトレッドミルというテストが必要に なります。   運動を行うにあたっての注意としては、運動は 体調の良い時だけ行う、食後は少なくとも2時間待 つ、天候、気温に応じた服装・運動量を考慮、暑 い時は早朝あるいは午後遅めに行う、十分な水分 補給、適切な服装と靴を着用、息切れ、胸部苦悶感、 関節痛のような症状が現れた場合は運動を中止し、 医師に相談してください。


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※この記事に関するご質問は日本クリニック ☎858- 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の 記事は、私のウェブサイト www.usjapanmed.com で読むことができます。


筆者閑談「アイドル/ヒーロー」  


 私の高校時代のヒーローはビートルズでした。 特に、ジョン・レノンにはいろいろな意味で影 響を与えられました。長髪にしたり、ジョン・ レノンにそっくりの友人は同じような丸い縁の メガネをかけたりしていました。


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