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40 SAN DIEGO YU-YU


APRIL 1, 2012


CLOSE UP 2012


切り札なし “打倒オバマ” 苦渋の選択 無党派層離れ…変質続ける共和党


「待望の候補者」 不在    依然、党分断の懸念  米大統領選の共 和党候補指名争い は、穏健派のロム ニー前マサチュー セッツ州知事と、 保守強硬派サント ラム元上院議員に よる歴史的な大接 戦で幕を開けた。  景気低迷を追い 風に民主党のオバマ大統領打倒を狙う共和党だ が、保守派と穏健派に分断した党を束ねられる 候補は不在。右傾化が進んだ現状を無党派層 に見放され、自滅するとの予測も浮上した。  3月に入り、ロムニー氏は米自治領プエルト リコとイリノイ州の予備選で圧勝し、共和党候補 指名への足場を固めたかに見えるが、同党支持 者からは「オバマに勝てる人材はいない」との 声も根強く残る。ロムニー氏は本当に “待望の 候補者” なのだろうか。


* * * * * 米大統領選の共和党候補指名争いで穏健派ロムニー氏がイリノイ州予備選に圧勝。獲得代議員数を541に伸ばし、8月の党大会での指名獲得への足場を固めた (3月20日)


 米大統領選の共和党候補指名争いは、 最大のヤマ場と言われた3月6日の


「スー


パーチューズデー」で、穏健派ロムニー前 マサチューセッツ州知事 (65) が10州中6州 を制して勝利。理想の候補を求め、さまよ い続けた同党有権者は、候補者としての適 性に疑念を抱えつつ、渋々ながらも


「オバマ


大統領の再選を阻止する唯一の選択肢」と してロムニー氏に結集し始めた。  ただ、各候補が保守性を競い合う選挙戦 が長引いた結果、本選で鍵を握る無党派層 の共和党離れも招いた。オバマ再選を目指 す民主党からは “敵失” を歓迎する声が漏 れてくる。


中絶より雇用


 オハイオ州コロンバスの職業安定所。タ イヤ工場を解雇されたアンソニー・パーカー さん (49) は慣れない手つきでコンピュー ターを操り、職を探していた。


渋々ながらも“最強の候補者” 避妊論議は19世紀末のレベル リベラル → 茶会 → 再び左傾 ?


 同州の予備選を前に保守強硬派のサント ラム元上院議員 (53) らが訴えた「中絶反対」 や 「同性婚反対」について尋ねると、パー カーさんは肩をすくめて「俺に必要なのは 雇用だ」と語った。  指名争いで各候補は、景気回復策や財政 健全化策に加え、


社会的価値観をめぐり 「自


分こそが真の保守派」という激しい論戦を 展開。キリスト教を重視し、庶民感覚を強 調して 「反エリート」


一部保守派に強く支持されてきた。  だが、支持者の1人だった元中学教員の マック・マカラさん (67) は、オハイオ州の 予備選6日前になってロムニー氏支持に切 り替えた。経済手腕への期待が理由だ。  


「中絶や避妊に反対するサントラム氏の主


張は大好きだが、選挙で重要なのは、そう いうことじゃない」とマカラさんは気付いた という。


ニー氏かもしれない」と妻のアリーシアさ ん (66) が補足した。


保守性


 共和党候補が保守性を競う背景には、オ バマ政権発足後の共和党支持層の保守化と 「ティーパーティー (茶会)」の台頭がある。  明快な保守性を打ち出さねば「穏健派」


「本選でオバマ氏に勝てるのはロム を掲げるサントラム氏は、 反動


 保守化が進んだのは大統領候補だけで はなく、2010年の中間選挙で当選した州知 事や議員も同様だ。オハイオ州では同選挙 で当選した共和党のケーシック知事が、公 務員の団体交渉権を制限する法を施行。そ の結果、無党派や共和党寄りの公務員が民 主党に結集し、昨年11月に同法を廃止に追 い込むという反動を招いた。  2008年にオバマ大統領を当選させてリベ ラルに振れた米国の民意は、2010年に茶会 とともに保守に振れた。2012年、振り子は 再び左に向かっているようにも見える。  オバマ大統領はスーパーチューズデーの 開票を前にした記者会見で、ロムニー氏へ の言葉を求められ「幸運を祈る」と余裕の 笑顔を見せた。■


「リベラル」と非難される風潮が強まった。  


「避妊の是非を議論するなど、


 共和党は黒人初のオバマ大統領を誕生させ た2008年の敗北で変質した。オバマ氏が推 進した医療保険改革や金融規制改革などリベ ラルな政策への反発から、保守派運動「ティー パーティー (茶会)」が台頭。2010年の中間 選挙を保守派の力で勝った結果、党指導部は


19世紀末の


レベルだ」  民主党オハイオ州委員会のレッドファー ン委員長は「共和党が無党派層に背を向け ている」と指摘する。ラスムセン社の世論 調査によると、1月下旬に45%で同率だっ たオバマ氏とロムニー氏の支持率は48%対 42%に開いた。


「保守派のご機嫌うかがいを欠かせなくなった」 (議会筋)。穏健派議員の多くは、選挙で苦戦 を強いられている。  英誌エコノミストは共和党の現状について


「信頼できる中道右派として無党派層が支持で きる大統領候補を出してほしいのに、偏屈で 極端で時代に逆行する考えを候補者に押し付 けてばかりいる」と指摘、中道派の不満を代 弁した。  共和党候補は人工妊娠中絶と同性婚、銃規 制に反対し、地球温暖化は非現実論だと主張 することを義務付けられているかのようだ ——。 こうした不満は中道派に幅広く共有されている ようだ。


* * * * *   「米国をもう一度軌道に乗せよう」


 ロムニー氏は一貫して支持者にこう語り続 け、共和党支持者に結集を呼び掛けてきた。 だが、予備選の序盤戦に候補者の中で最右派 のサントラム氏と、最もリベラルと目されるロ ムニー氏が僅差で首位を争った事実は、党の 分断ぶりを鮮明に物語っていた。  オバマ氏の選対本部は、


支持者に送ったメー


ルで「共和党有権者は誰の下にも結集できな かった」と決定的な候補の不在を指摘。共和 党の「極端な保守性」を強調し、無党派層を 味方に付けるのがオバマ陣営の戦略なだけに、 サントラム氏ら保守強硬派の伸長を望むんでい る。  


「正直に言って、今回の共和党候補じゃオバ


マ氏に勝てないと思う。あと4年もオバマ政権 の経済政策が続くかと思うと、ぞっとする」  ロムニー氏を支持する有権者の1人が嘆息 混じりに打ち明けた —— 。


資料: 共同通信社


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