66 SAN DIEGO YU-YU
MAY 1, 2012 Medical
アメリカ健康ノート
第140回 食事の仕方
(Dietary Guidelines)
健康増進と病気予防のために
誤った食事と運動不足は、肥満、心血管系の病気 (心筋 梗塞、脳梗塞など)、高血圧、2型糖尿病、骨粗しょう症、 がんなどの原因になります。 一般のアメリカ人もアメリカ在住の私たちも、食事内容に は多くの共通点があります。摂取する塩分が多い、固形脂 肪 (固形脂) からのカロリーが多い、糖分の摂取が多い、精 白された穀物をよく食べる——などです。健康的な食事と は、塩分、固形脂肪、砂糖、精白された穀物の摂取量を下げ、 野菜、果物、豆類、全粒穀物、無脂肪または低脂肪のミル クとヨーグルト、シーフード、ナッツ類と種子の摂取を多く します。 以下は、アメリカの政府機関が発行した食事のガイドライ ンに沿った食事の指南です。
摂取を抑えた方がいい栄養素
▽ナトリウム ナトリウム (食塩=塩化ナトリウムの成分) は体に必要で すが、取り過ぎると高血圧の原因になります。ソーセージや ハムなどの加工食品に多く含まれるので、なるべく新鮮な 食品を摂取します。ナトリウムの1日摂取量は2.3グラム (食 塩量に換算して5.8グラム) 以下にします。50歳以上の人、 糖尿病、高血圧、慢性腎臓病のある人は1.5グラム (食塩量 としては3.6グラム) 以下です。
金 一東 日本クリニック・サンディエゴ院長
日本クリニック医師。 神戸出身。岡山大学医 学部卒業。同大学院を経て、 横須賀米海軍病 院、宇治徳洲会等を通じ 日米プライマリケア を経験。その後渡米し、 コロンビア大学公衆 衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、 内科・小児科合併研修を終了。 スクリップス・ クリニックに勤務の後、現職に。 内科・小児 科両専門医。
▽脂肪 脂肪は必須脂肪酸 (体内で生成できない脂肪酸) を供給 し、ビタミンA、D、E、Kの吸収を助けます。しかし、摂取 量が多すぎたり、脂肪の種類によっては肥満や他の生活習 慣病の原因になります。 脂肪は脂肪酸 (fatty acids) で構成され、飽和脂肪酸と不飽 和脂肪酸 (単価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸) が含ま れています。動物性脂肪は飽和脂肪酸を多く含み、心血管 系の疾患のリスクになります。植物性脂肪は不飽和脂肪酸 を多く含み、心血管系の疾患のリスクを下げます。 ・ トランス脂肪酸 トランス脂肪酸 (trans fatty acids) は自然の食品にも含まれ ますが、油である不飽和脂肪酸を固形化することによって 人工的にも生成されます。トランス脂肪酸を多く摂取すると 悪玉コレステロールを増やし、心血管系の病気のリスクにな ります。トランス脂肪酸は、マーガリン (スティック状のも の)、スナック食品、肉、乳製品など含まれます。 ・ コレステロール コレステロールは体に必要な栄養素ですが、体内で十分 量生成されるので、食事で摂取する必要はありません。コレ ステロールは肉や卵など動物性食品に多く含まれています。 心血管系の病気のリスクになるので、1日の摂取量は300mg 以下に抑えます。 ・ 固形脂肪 飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を含む脂肪は室温では固形 状 (固形脂肪) で、心血管系の病気のリスクを上げるので、 固形脂肪の摂取量を減らします。固形脂肪には、ココナツオ イル、バター、牛肉の脂肪、ラード、スティック状のマーガ リン、
ショートニングなどがあります。ケーキ、 ピザ、
ソーセージ、ベーコン、フレンチフライなどの食品に含まれ ます。 ▽砂糖と添加糖分 糖分は、食品に添加されたり、加工食品に多く含まれます。 添加された糖分は、果物に含まれる果糖のように、特にそ れ以外の栄養素を体に与えるわけではありません。糖分は
カロリー過多や虫歯のリスクになります。 添加糖分には、砂糖、コーンシロップ、メープルシロップ、 フルクトース、デキストロースなどがあります。添加糖分は、 ソーダ類、ケーキ、クッキーなどに含まれています。 ▽精白された穀物 穀物が精白されると、ビタミン、ミネラル、食物繊維など が失われます。精白された穀物を使った食品としては、
白米、
白食パン、ケーキ、クッキー、ドーナツ、ピザ、トーティラ スなどがあります。 ▽アルコール アルコールは少量だと、心血管系の病気のリスクを下げた り、他の病気のリスクを下げますが、飲酒運転、事故、暴力 沙汰、乳がんのリスクなります。適量を超えるとアルコール による健康の障害が著明になってきます。アルコールの適量 は、1日当り、男性でコップ2ドリンク以内。女性は1ドリ ンク以内です。
より多く摂取した方がよい栄養素 チーズ、
▽野菜と果物 野菜と果物には、葉酸、マグネシウム、カリウム、食物繊 維、ビタミンA、C、Kなどいろいろな栄養素が含まれます。 野菜と果物の摂取は、多くの慢性疾患のリスクを下げたり、 心血管系の疾患やある種のがんの予防になります。野菜と 果物には余計に添加されているものがなく、カロリーも低め です。 果物はなるべく新鮮なものがいいのですが、缶詰め、乾 燥や冷凍果物でもかまいません。ジュースは100%ジュース にします。野菜の一種である豆類は、鉄分、亜鉛などの栄 養素以外にタンパク質を豊富に含んでいるので、大事な食 品です。 ▽精白されていない穀物(全粒穀物) 全粒穀物は、鉄分、マグネシウム、セレニウム、ビタミン B群、食物繊維などを含んでいます。全粒穀物を食べると、 心血管系の疾患のリスクを下げます。全粒穀物には、玄米、 全粒粉のパン、全粒粉のシリアル、全粒のオートミルやライ 麦などがあります。 ▽ミルクと乳製品(栄養強化された豆乳も含む) ミルクや乳製品には、カルシウム、ビタミンD、カリウム などの栄養素が含まれています。ミルクや乳製品の摂取は 骨の健康を保ち、心血管系の病気、糖尿病、高血圧のリス クを下げます。成人の場合、1日当り3カップの無脂肪また は低脂肪 (1%) のミルク、ヨーグルトなどの乳製品が勧めら れています。 ▽タンパク質 タンパク質は、シーフード、肉類、家禽類、卵、豆類、大 豆製品、ナッツ類、種子、ミルク、乳製品などに含まれてい ますが、これらの食品にはビタミンB群、ビタミンE、鉄分、 亜鉛、マグネシウムなども含まれています。ピーナツや他の ナッツ類は心血管系の疾患のリスクを下げますが、多く食べ るとカロリー超過になります。 ▽シーフード 魚、エビ、カニなどのシーフードにはオメガ3脂肪酸 (エ イコサペンタエン酸=EPA、ドコサヘキサエン酸=DHA) が 多く含まれています。EPAとDAHの摂取は心疾患による死 亡率を下げます。EPAとDAHを多く含み、メチル水銀を少 なく含むシーフードを摂取します。サケ、アンチョビー、ニ シン、イワシ、カキ、マス、サバ (ただし king mackerel を除 く) などです。 また、オメガ3脂肪酸は、妊娠中や授乳中の女性が摂取 すると、胎児や赤ちゃんの視力や認知能力の発達に良いとさ れています。ただし、妊婦及び授乳中の女性は、アマダイ類、
サメ、メカジキ、king mackerel (サバの一種) は避けた方が いいでしょう。マグロは大丈夫ですが1週間に180グラム以 下にします。 ▽油 不飽和脂肪酸を含む脂肪は、室温では液体 (油) です。 油の摂取によって総コレステロールと悪玉コレステロール (LDL) は下がります。油は自然には、 フードに含まれます。
また、 キャノーラ、
オリーブ、 コーン、
ナッツ類、 オリーブ、
シー ピー
ナッツ、サフラワー、大豆、ひまわりなどの植物から抽出さ れます。ココナツ油、ヤシ油は飽和脂肪酸を多く含みます。 ▽カリウム カリウムには血圧を下げる、腎結石のリスクを下げる、骨 密度の低下を防ぐなどの効果があります。腎臓病のある人や ある種の薬を服用している人は、必要以上のカリウムが摂取 できないので医師に相談をしてください。カリウムは、野菜、 くだもの、ミルク、乳製品に多く含まれます。 ▽食物繊維 豆類、他の野菜、果物、全粒穀物、ナッツ類などにも含ま れます。食物繊維は便通を良くするだけでなく、心血管系の 疾患、肥満、糖尿病などのリスクを下げます。 ▽カルシウム カルシウムは骨の健康のために必要です。それ以外にも、 神経の機能、血管の収縮と弛緩、筋肉の収縮に必要です。ミ ルクと乳製品に多く含まれます。小魚などには多くのカルシ ウムが含まれますが、実際に体に吸収されるのは少量です。 ▽ビタミンD カルシウムと共に骨の健康に必要です。特に高齢者の骨折 のリスクを下げます。ミルク、ヨーグルト、シリアル、マー ガリン、オレンジジュース、豆乳などに含まれます。 ▽鉄分 妊娠可能年齢の女性、妊婦、授乳中の女性は特に鉄分が 必要ですが、鉄分の多い食べもの、鉄分の吸収を助けるビタ ミンCの多く含まれた食べ物を摂取します。鉄分の多い食 べ物としては、脂肪の少ない肉、家禽 (かきん)、シーフー ドなどです。ホワイトビーン、ホウレン草なども鉄分が豊富 ですが、含まれている鉄分はノンヘム鉄で、少し吸収されに くくなっています。 ▽葉酸 葉酸の摂取によって、先天的な神経管閉鎖障害が少なく なってきました。妊娠可能年齢の女性は、1日当り400mcg、 妊娠中の女性は600mcgの葉酸を摂取します。葉酸の含まれ た食品としては、豆類、オレンジ、オレンジジュース、濃緑 野菜などがあります。 ▽ビタミンB12 50歳以上の人は、食物に自然に含まれているビタミンB12 の吸収が良くないことがあるので、ビタミンB12が含まれ ているシリアルやサプリメントを取ることが薦められていま す。
X X X X X
※この記事に関するご質問は日本クリニック ☎858-560-8910 まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブ サイト
www.usjapanmed.com で読むことができます。
筆者閑談「顔」
高齢の母親が “しわ取り手術” を受けたという アメリカ人の友人が、私にこう言いました。
のしわは、自分が笑ったり、泣いたりした人生 の結果で、自分の人生そのものなので、しわを 取るための手術なんかしたくない」と。
「顔
Page 1 |
Page 2 |
Page 3 |
Page 4 |
Page 5 |
Page 6 |
Page 7 |
Page 8 |
Page 9 |
Page 10 |
Page 11 |
Page 12 |
Page 13 |
Page 14 |
Page 15 |
Page 16 |
Page 17 |
Page 18 |
Page 19 |
Page 20 |
Page 21 |
Page 22 |
Page 23 |
Page 24 |
Page 25 |
Page 26 |
Page 27 |
Page 28 |
Page 29 |
Page 30 |
Page 31 |
Page 32 |
Page 33 |
Page 34 |
Page 35 |
Page 36 |
Page 37 |
Page 38 |
Page 39 |
Page 40 |
Page 41 |
Page 42 |
Page 43 |
Page 44 |
Page 45 |
Page 46 |
Page 47 |
Page 48 |
Page 49 |
Page 50 |
Page 51 |
Page 52 |
Page 53 |
Page 54 |
Page 55 |
Page 56 |
Page 57 |
Page 58 |
Page 59 |
Page 60 |
Page 61 |
Page 62 |
Page 63 |
Page 64 |
Page 65 |
Page 66 |
Page 67 |
Page 68 |
Page 69 |
Page 70 |
Page 71 |
Page 72 |
Page 73 |
Page 74 |
Page 75 |
Page 76 |
Page 77 |
Page 78 |
Page 79 |
Page 80 |
Page 81 |
Page 82 |
Page 83 |
Page 84 |
Page 85 |
Page 86 |
Page 87 |
Page 88