王朝の歴史を育んだ自然 水や風に思い巡らせ フランス・ロワール川
ちろん、石灰岩を切り出してつくった貯蔵庫は、 適度な温度と湿度を保つためには最適なのだと いう。今では見学コースとなっているかつての貯 蔵庫に入ると、ひんやりした空気に包まれる。 石灰岩は、建材としても大きな役割を果たして きた。古城の壁の白さも、石灰岩ならでは。15 世紀、
シャルル7世からフランス王室のものとなっ
らせん形のプロペラが付いたヘリコプターの 模型も、図案を基につくられた。自然の中で育っ たダビンチが、鳥を観察していたときのひらめ きが反映されたのだという。「羽根が地に落ちる とき、直線的ではなく、ゆらゆらと舞い落ちる 様子を見て、飛行への思索を深めたんです」と、 広報責任者のカトリーヌ・マリオンさん。 「晩年にクロ・リュセに移り住んでからは、近 くを流れるロワール川や、屋敷を囲む森の影響 から、水や風にいっそう興味を引かれて、数々 の素描を残しました」 アンボワーズでは、観光用の気球が頻繁に飛ん でいる。幸いにも天気に恵まれ、乗り込むと、高 度約600メートルまですっと上昇。最初は足がす くんだが、白い城壁が、悠々と流れるロワール川 に映り込む姿に、どんどん引き込まれていった。
(共同) 空から見下ろしたロワール川とアンボワーズ城=フランス・アンボワーズ
フランスの中央を東西に流れるロワール川。国 内最長の大河に沿って、華麗な古城が立ち並ぶ。 河口に近いナントから上流へとさかのぼり、自然 の中で育まれたフランスの王朝文化に触れた。
X X X X X X X X X X X X X X 豊かな農産物
大西洋に近く、流通の拠点として栄えてきたナ ント。15世紀にブルターニュ公が暮らした城内 に並ぶ展示物が、都市の歴史を物語る。異国情 緒あふれる花鳥がモチーフになった染め物用の 版木や奴隷船の展開図など、三角貿易の足跡も 残る。 市内最大のタランサック市場は国内有数の農 業地帯、ロワール地方の縮図だ。ヤギの乳を使っ たチーズ、色とりどりの野菜や果物、肉類が各 地から集まる。
発泡ワインを注ぐアッケルマン社のグドさん= フランス・ソミュール
で先駆的に生産を手掛けてきた。
さまざまな品種のブドウが栽培され、多様な 種類のワインを楽しめるのも、この地方の魅力 の一つで、発泡ワインの産地としても名高い。創 業200年のアッケルマン社は、ソミュール地区
色とりどりの野菜が並ぶタランサック市場=フラン ス・ナント
たアンボワーズ城も、壁や柱から暖炉の装飾ま で、石灰岩でつくられている。 階段を上ってテラスに出ると、水の流れを見下 ろし、木々の緑を見渡せる。室内では、紋章があ しらわれたステンドグラスや、大きなタペストリー が白い内壁に映える。天窓の建築様式や伸縮性 のテーブルといった家具には、イタリアから取り入 れたルネサンスの影響が見受けられるという。
天才の思索
16世紀、フランス・ルネサンスの時代を築い たフランソワ1世は、イタリアの芸術家たちと親 交を深め、中でも天才、レオナルド・ダビンチを アンボワーズに呼び寄せ、
城近くの屋敷「クロリュ ・ 「石灰質の土壌が、発泡ワインづくりに適して
いるのです。(シャンパンの)シャンパーニュ地方 と同じなんですよ」と、同社のジュリー
・
レオナルド・ダビンチの図案に基づいてつくったヘリコプ ターの模型(手前)とクロ・リュセの屋敷=フランス・アン ボワーズ
30 SAN DIEGO YU-YU FEBRUARY 16, 2012 白い内壁 この土壌がブドウの味わいに与える影響はも グドさん。
セ」に住まわせた。 ダビンチが晩年を過ごした建物は今も残り、 庭園に設けたテーマパークを巡ると、自然に影 響を受けたダビンチの思考をたどることができ る。科学者、技術者として描き残した機械や戦 車が再現され、スケッチとともに展示、大砲を 操作すると煙が出てきて臨場感を味わえる。
ロワール川上空を飛ぶ気球=フランス・アン ボワーズ
ロワールの古城巡り
ロワール川は全長千キロ以上。このう ちアンジェ城周辺から、川上のシュリー・ シュル・ロワール城周辺まで、国連教育 科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に 文化遺産として登録された区域は約800 平方キロ。ペイ・ド・ラ・ロワールとサント ルの両地域圏にまたがる広大な区域だ。 鉄道を使って古城巡りを楽しむなら、 パリから高速鉄道(TGV)で約1時間の トゥールを拠点に、それぞれの最寄り駅 から徒歩圏内のアンボワーズ城やシュノン ソー城を訪ねることもできる。 気球の遊覧は悪天候で中止になること もあるので、余裕のある日程を組んだ上 で予約を入れるのがおすすめだ。
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