CLOSE UP 2012 橋下流 「監視」 は正当な業務管理? 大阪市役所の公用メール極秘調査
大阪市労組が救済申し立て検討 管理職 →組合員へ対象拡大? 橋下大阪市 長が命じた職 員の業務メール の調査が不当 労働行為に当 たる疑いがある として、市職員 でつくる「大阪 市労働組合連合会」が、府労働委員会に救済 申し立てを検討していることが3月2日、同連 合会への取材で分かった。 現時点でメール調査の対象は管理職とされ ており、対象が組合員に広がるかどうかを見 極めた上で判断する。 大阪市によると、2月17日に市特別顧問の 野村修也弁護士が中心となった調査チームが、 管理職150人分のデータを市側から提供され ていた。 野村弁護士は3月1日の中間報告で、業務 メールを使用し、当時の市長と国会議員に違 法な政治活動の疑いがある事例が見つかった、 と明らかにした。(*本文参照) 一方、市労連弁護団の北本修二事務局長は
「一律にメールを収集するのは非常識だ」と批 判し、
「公務員は組織的な勧誘は禁止されてい
るが、すべての政治活動が禁止されているわけ ではない」と指摘している。
橋下大阪市長による市職員公用メール極秘調査の事実が発覚し、 市労連は「不当労働行為」と猛反発。民間企業では約4割が情報流出防止の目的でメール監視を行っている
橋下徹・大阪市長が職員の公用メールを極 秘調査していることが発覚し、市役所全体が大 きく揺れている。労働組合側は「プライバシー 権の侵害」
「トイレに監視カメラを付けるような
もの」と猛反発するが、橋下市長は「違法性は ない」と涼しい顔。トップのメール監視は正当 な業務管理か、行き過ぎか ―― 。国政をにらむ 橋下市長の手法には、疑問がつきまとう。
変態趣味
「思想調査なんてやるつもりもないし、 変態趣味は僕にはありません」 明らかになった2月22日、
そんな 。メール調査が 橋下市長は記者団を
前にこともなげに言い放った。 市によると、2月17日午前、調査チームのメ ンバー山形康郎弁護士がIT統括課を訪れた。
「全職員のメールデータが欲しい」
約23,000人に及ぶ膨大な量。訝 (いぶか) る担当者が「提供するのに100日かかる」と答 えると、市の幹部150人分の職員番号を書い たリストを示し、
「労使関係の調査だ」
調査チームのトップは、厚生年金記録改ざん 問題で手腕を発揮した野村修也弁護士。3月1 日の中間報告では「選挙運動のために勤務時 間中に公用メールで、前市長と国会議員との 面談を調整したことが見つかった」と明らかに し、公務員に一定の政治活動を禁じた地方公 務員法違反の疑いがあると指摘した。
民間でも 財団法人 「労務行政研究所」 が2010年3月、
日本国内199社から回答を得たアンケートで は、
「メールのモニタリングをしている」とし
た企業は実に4割に上った。 管理権の優先か、プライバシーの保護か。 社内ネットワークを使った私的メールを上司に 無断で閲覧されたとして部下が損害賠償を求 めた訴訟の2001年12月の東京地裁判決は、
と迫った。
市政改革へ向けての思想調査? プライバシー権侵害と労組反発 日本企業の4割がモニタリング
48 SAN DIEGO YU-YU
「監視目的や手段と、監視される側に生じた不 利益を比較し、社会通念上相当な範囲を逸脱 した場合にプライバシー権の侵害となる」との 判断を示した。 2004年7月の厚生労働省の個人情報保護 法に関する指針では、
メールなど個人データの
開示を求める場合「あらかじめ労組側に通知 して協議することが望ましい」と規定している ものの、自治体は対象外になっている。 情報セキュリティーに詳しい安冨潔・慶応大 教授は
「事前に服務規律でモニタリングを定め
ずに実施したとすれば妥当といえない」と大 阪市の調査に疑問を投げ掛ける。
強権
野村弁護士はメール調査を「組合活動とは 無関係」と釈明したが、橋下市長は「管理職と 組合の関係がどうなっているのか、調査する のは当たり前だ」と強気の姿勢を崩さない。 府知事時代から大胆な改革と刺激的な発言 を繰り返し、今や永田町からも大きな注目を 集める橋下市長。だが、
強権的な手法に 「待っ
た」を掛ける動きもある。 大阪府労働委員会はメール調査が発覚した 当日、市職員を対象に実名で回答を義務付け た組合活動に関するアンケートについて「不当 労働行為のおそれがある」と指摘。野村弁護 士は3月1日、回答を事実上廃棄することを 表明せざるを得なくなった。 市役所改革と
大阪市労連の弁護団事務局長を務める北本修 二弁護士は「書店の監視カメラは万引防止が 目的だが、更衣室やトイレの中に付けたらどう か。橋下市長の調査は目的が分からないのが 一番の問題だ」と話す。
「調査対象」とされたある市幹部は「プライ
ベートではなく職務上のメールなので、調査さ れても仕方ないが、気持ちが悪い」と顔をし かめた。■
企業の監視はメール以外にも 退職者と守秘契約、
罰則規定
一昨年に「労 務行政研究所」 が実施したアン ケート調査で、 企業秘密や顧 客情報の流出 を防ぐ手段の 一つとして「役 員、
社員らの電子メールをチェック」している日
本国内の企業は約4割に上ることが分かった。 退社した人が在職時に知り得た秘密を漏ら さないよう、秘密保持契約を結ぶことも珍しく ない。
秘密を漏らした場合の罰則規定を明確に
定めている企業もある。 現役社員に対しても、
企業秘密を扱う部屋へ
の入退室は特別なキーや暗証番号を必要とし たり、
秘密文書と一般文書の明確な区別、役職 「監視」の危ういバランス。
に応じたアクセス権限設定などの管理、企業 秘密漏れを防ぐ専門部署の設置も「当然」と言 われる時代になった。 10年ほど前、富士通が研究開発を請け負っ た防衛庁のコンピューターシステムのデータ流 出や、NTTドコモ子会社社員が顧客の通話記 録を不正に引き出した疑いで警視庁に逮捕さ れるなど、情報管理をめぐる事件がクローズ アップされ、
以来、 企業の監視の目は、 日常的に
やりとりされる電子メールにとどまらず、社員の 退職後もついて回るようになった。 インターネット関連では、日米を問わず、企業 内情報システムとネットなど外部を完全に分離 したり、企業内情報システムと外部ネットとの 間に、ファイアーウオール (情報隔壁) など情 報漏れや外部からの侵入を防ぐ機器、ソフトウ エアを設置するのは常識となっている。
資料: 共同通信社
MARCH 16, 2012
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