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世界に広がる無限の模様 民族の誇り、タータン 英スコットランド


ドの文化だ』と強調できる」と言う。  北部ハイランド地方に由来するタータンが、 スコットランドを象徴する存在となった背景に は、戦いの歴史がある。  節目は18世紀。スコットランドがイングラン


た無数の糸の色味は、全て異なる。有名ブランドや 北米への移民の子孫など、世界各地からの依頼に 合わせ、熟練の職人が配合する。  ボーダーズに繊維産業を発展させたのは、ツ イード川やその支流だという。澄んだ水は織物を 洗うのに適しており、織機は水力で動いていた。  川の流れを、セルカークの隣町メルローズ近 くの展望台「スコッツ・ビュー」から見下ろした。 牧草地の先には地平線。眼下ではハリエニシダ が黄色い花を付けている。静けさの中で息づく 自然に息をのんだ。  ここ数十年の間に、中国産などの勢いに押さ れ、周辺の工場は次々に閉鎖。それでも、同社 のドーン・ロブソンベルさんはスコットランドで作 り続けることに意味があると考える。 はスコットランドの誇りだから」


「タータン (共同) 作家ウォルター・スコットが愛したスコッツ・ビューからの景色=英ボーダーズ地方


 人気ブランド店が立ち並ぶロンドン・ボンド 街。英国を代表するファッションブランドの店内 では、鮮やかな格子模様のバッグやコートが存 在を主張する。モチーフは、英国を代表するあ や織り物タータンだ。多くの人に愛される格子 模様のふるさと、スコットランドへ飛んだ。


X X X X X X X X X X X X X X 6,300種


 エディンバラの市街地には、歴史的な面影 が残る。岩山の頂に立つエディンバラ城は、町 を一望できる要塞の姿を保つ。城壁に並ぶ大 砲や、捕虜の監獄が、イングランドとの間で繰 り返された戦いの歴史を物語る。  町を歩けば、郷愁を誘う音楽が漂ってくる。民 族衣装「ハイランドドレス」をまとった男性が、


ハイランドドレスをまとって演奏する路上演奏 家=英エディンバラ


パディントン駅に飾られたパディントンベアの像 =ロンドン


36 SAN DIEGO YU-YU MARCH 16, 2012


だけでも6,300種を超える。正方形の中で、縦 横どちらからでも同様に見えるようにしまを組み 合わせた簡素な模様。しまの太さや並べ方、色 合いを変えるだけで無限にパターンが生まれる。  登記所は、民間機関から引き継ぎ2009年に 発足。行政が業務を担う意義について、担当のア リソン・ダイヤモンドさんは


こに登記所を置くことで『タータンはスコットラン


街角でバグパイプを奏でていた。目を引くのは、 タータンでできた、腰回りにまとったキルト。  タータンの模様は多種多様だ。エディンバラの スコットランド・タータン登記所に登録されている


織り上がっていくタータン=英セルカークのロキャ ロン社


ドと合併した後、独立を求めた勢力が敗北。土 着の文化が抑制され、軍服に採用していたター タンも着用が禁じられた。  同世紀後半、禁止が解かれ、廃れていた慣習 を復活させる風潮が一気に高揚した。家紋のよう な意味を持つ、氏族ごとに定めた


や、地域ごとの「ディストリクトタータン」という 伝統の型が確立していったのだ。


熟練の配合


 最近では、ファッションブランドや地元の企業 が、次々に新たな型を生み出している。


「新しい息 「世界に広まる中、こ


吹を吹き込むことで、古い文化は廃れず生き続け ることができるでしょ」とダイヤモンドさん。  新型を積極的に手掛けるロキャロン社は、エ ディンバラの南、ボーダーズ地方のセルカークに 社屋を構える。これまでに織り上げた700種を 超える織物が倉庫に並ぶ。  ジャカジャカジャカ—。工場の扉を開けると、い くつもの織機の音が、輪唱のように響き渡った。作 業は糸を染めるところから始まる。約40種の染料 から選んで掛け合わせ、顧客の要望にぴったりの色 を作り出す。引き出しに並ぶカードに貼り付けられ


倉庫に並ぶ色とりどりのタータン=英セル カークのロキャロン社


「クランタータン」   「ヴィヴィアンウエストウッド」など、


ロンドン五輪で注目 ・


数々


の顧客を抱えるロキャロン社では、この冬 の受注が好調という。引き金は2012年7 月開幕のロンドン五輪。  英国調ファッションが流行となり、数多 くのブランドがタータンを使ったり、その格 子模様をモチーフに取り入れたりしている。  ロンドンでも、有名百貨店ハロッズに近 い地下鉄ナイツブリッジ駅の構内を歩いて 驚いた。壁を埋め尽くす米国のブランドの ポスターで、モデルがまとうパンツや帽子 はタータンばかり。タータンの格子が、英 国を代表する模様として世界に浸透してい ることが実感できる。


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