48 SAN DIEGO YU-YU
JUNE 16, 2012
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東京スカイツリー華々しく開業 テレビ塔と観光集客、商業優先で発進
ツリー足元に “監視網” 下町住人に戸惑いも 5月22日に開業し た東京スカイツリー の足元に広がる東京 都墨田区の下町に防 犯カメラ77台が新 設され、一部で運 用が始まった。警視庁が新宿・歌舞伎町に設置 した55台を上回る規模の “監視網” だが、知 り合い同士で地域の安全に目配りを続けてきた
「人情の町」の住民には戸惑いもみられる。 江戸時代からものづくりの町だったツリー周 辺では、今も狭い路地に町工場や商店、住宅が 肩を並べる昔ながらの町並みが残る。防犯カメ ラはツリー開業で観光客が急増することに対す る住民不安を和らげる目的で設置された。 費用は1台約50万~70万円。墨田区が都か ら総事業費の半額を補助金として受け取り、残 りの費用は19ある町会と区が負担した。
「以前は雨が降れば隣の家の窓を閉めに行く
ような町だった。防犯カメラを付けるような場 所になって寂しい」
。地元で夫とラーメン店を切 世界一高い電波塔の東京スカイツリー (634メートル) が 5月22日に開業。初日の展望台の入場券9千枚は完売。7月10日までは完全予約制で、連日ほぼ満員の状態という
東京スカイツリーが華々しく開業した。634 メートルの高さを誇る
「世界一の電波塔」が
売りだが、テレビの地上デジタル放送を “先輩” の東京タワーに代わって出力し始めるのは来 年1月。朝から雨となった5月22日にオープ ンしたのは、展望台や商業施設など、あくま でビジネスベースの部分だ。テレビ放送を良質 化するタワーと、観光集客のランドマーク。巨 大な塔は2つの顔を持つ。
プロジェクト 「異次元の世界」 「高すぎて怖いぐらい」。オー
プン直後の展望台。300倍を超える競争率を くぐり抜けた入場客が足を踏み入れ、声を上 げた。晴れていれば南西方向の眼下に望める 東京タワーは、雨に煙って全く見えなかった。 東京タワーは日本でテレビ放送が始まった ばかりの1958年に完成した。各放送局の電 波を集約し、高所から発信することで視聴可 能地域を関東一円に広げた。家庭でチャンネ
TV界の事情より地元の誘致熱 商業ビル賃貸業に電波塔が付随 技術立国と震災復興のシンボル
ルごとにアンテナの向きを変える不便が解消 された。 45年後の2003年。地上デジタル放送への 移行を決めたNHKと在京民放5社が新タワー 推進プロジェクトを発足。① 高層ビルの影響 で一部地域の受信状況が悪い、② 携帯電話 のワンセグ放送に支障が出る ―― などを根拠 に、600メートル級タワーの必要性を訴えた。 だが、ある放送局の幹部は「テレビ映りの 悪い世帯は個別の工事で対応している。スカ イツリーがなくても、放送に支障を来す状況 ではない」と話す。
「建設を決めた最大の要
因は、テレビ界の事情ではなく、地元の熱心 な誘致ではないか」とも。
期待
運営会社の東武タワースカイツリーは、観 光振興と町興 (おこ) しを強調。ある幹部は 「商業ビルなどの賃貸事業に、電波塔が付い てきたような感じ」とビジネス部分が優先して いることを認める。 放送事業を所管する総務省の担当者は「良 質な電波を供給したい放送局の意向があるの だろう。(東京タワーから地デジ電波を発信し ている) 現状に、大きな支障があるわけでは ないが…」と歯切れが悪い。 ただ、建設が進むにつれ、観光スポットと
象徴
高度成長期、東京タワーはテレビを娯楽の 中心に押し上げる役割を果たした。不況に人 口減、高齢化とマイナス要因ばかりの今、ス カイツリーは東日本大震災の揺れに耐え、未 来に向かう。 神奈川大の内田青蔵教授 (近代建築史) は
「技術立国のポテンシャル (潜在能力) を示 す象徴、さらには震災復興のシンボルとして、 目指すべき社会を再確認させてくれる存在に なってほしい」と話している。■
しての期待が日に日に高まった。建造物として の規模が段違いに大きいことが、人気の要因 となった。 333メートルの東京タワーは、かつて自立 式鉄塔として世界一の高さを誇った。スカイ ツリーの最も高い第2展望台は、それをはる かにしのぐ450メートル。高層ビル群を眼下に、 富士山や東京湾の入り口まで見渡せる眺望は 圧巻のスケールだ。 開業から1年間の入場者は東京タワーが 520万人。対するスカイツリーは併設の商業 施設を合わせ3200万人を見込む。東京ディズ ニーリゾートの1.25倍という強気の算定だが、 旅行会社の担当者は「海外を含め関心は非常 に高い。妥当な数字だろう」とみる。
り盛りする来栖悦子さん (62) は残念がる。 カメラは区と町会が共同で管理し映像を24 時間記録。だが、プライバシー保護のため、常 時監視する人は置かず、警察官が映像を見る場 合でも警察署長名の申請が必要だ。区は「監視 よりも、カメラがあることで安心してもらうのが 目的」と説明する。 観光客にもカメラの存在が分かるように、設 置場所は交差点の電柱など目立つ場所が多い。 当面は東武伊勢崎線の「とうきょうスカイツリー (旧業平橋) 駅」周辺と、浅草方面から続く市 街地が対象だが、区は今後も増設を検討する。 ツリー近くに住む秋元三男さん (82) は「病院 に行く間、家を空ける高齢者も多くなったので 防犯カメラがあると安心」としながらも 良さがなくなっていく」と話した。
「下町の
ツリー効果1700億円超 観光客誘致でさらに拡大も 東京スカイツリー開業で首都圏は観光地として の魅力が高まり、国内外からの観光客増加に期 待が広がる。ツリーの地元の墨田区が2008年に 発表した試算では、全国で年間1700億円超の 経済効果を見込んでいたが「実際はそれ以上の 効果を生み出しそうだ」と、同区担当者。昨年 の東日本大震災で外国人観光客が減少した後だ けに、回復への期待は膨らむ一方だ。 全日本空輸の伊東信一郎社長は
「震災で落ち
込んだ首都圏の観光需要を盛り返す起爆剤に なってほしい」とエールを送る。観光産業にとっ ては需要拡大の絶好のチャンスで、首都圏では 東京ディズニーリゾートに次ぐ観光スポットにな る可能性があるからだ。
「長期間にわたって観光客誘致が見込める大型 施設」 との指摘もあり、関東周辺の自治体も開業 ブームに乗り遅れまいと知恵を絞る。 とうきょうスカイツリー駅から特急で2時間弱、 日光や鬼怒川の観光名所を抱える栃木県。地元 シンクタンク、あしぎん総合研究所 (宇都宮市) の試算では、同県への波及効果は年間370億円。 観光客誘致はスカイツリーを訪れる人の1割程 度、年間250万人が見込まれるという。
資料: 共同通信社
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