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58 SAN DIEGO YU-YU


AUGUST 16, 2012


国内外で新作、回顧展 草間弥生、激発する創造


草間弥生「果てしない人間の一生」 KUSAMA, Courtesy of OTA FINE ARTS.)


(2011ⓒYAYOI


 前衛美術家、草間弥生の勢いが止まらない。  これまでに延べ約27万人を動員した新作展が国内を巡回中で、テート・モダン


◎ 色彩の洪水 ◎


  ピンクや青、シルバー…。会場に入ると、生命力が渦を巻くような、めくるめく色彩の洪水 が押し寄せる。単細胞生物のようなもの、眼鏡、コーヒーカップ、女性の横顔など、不気味で、 それでいてユーモラスなモチーフが増殖していく。新作展 型キャンバスのシリーズ


「永遠の永遠の永遠」に出品した大 「わが永遠の魂」だ。 (網)ペインティングとは異なる。 「ここ数年想像力と創作意欲が激発している」と


埼玉県立近代美術館館長の建畠晢。  ほとばしる圧倒的なエネルギーと幻惑的なイメージはこれまでと同じだが、代表作の水玉や ネット


「草間さんは 『無限の反復』を子どものころから現在ま


で続けている非常に珍しい画家。多様なバリエーションがあり、豊穣な草間ワールドをつくって いる」  水玉や網目が全面を埋め尽くす画風に変化が表れ、具象的な要素が強まった。即興性やスピ ード感、線のおもしろさに加え、コロリスト


(色彩画家)としての才能があふれている。


 草間は下絵も描かず、地塗りをしたキャンバスをテーブルに置き、その前に座ると、いきなり 筆を置いて描き始める。


建畠は


「筆を手に持った瞬間に美が見えている。 ◎ 時代の先駆者 ◎


試行錯誤がない」


 わきあがるイメージの秘密を草間に尋ねても、本人にも分からないようだ。 てくるの、アイデアがね。どんどん手が動いていって、描き上がって


と話す。 「じゃんじゃん出 『あ、こういう絵だったのか』


ってことになるんです」  10歳のころから水玉と網模様をモチーフに絵を描き始め、1957年に渡米。帰国する73年ま で最先端のアートの潮流に身を置き、その先頭に立つまでになった。  テート・モダンの学芸員は、解説の中で と評し、唯一、アンディ・ウォーホルを  


「前衛芸術家」を名乗り 「常に時代の先駆者でありたい」と言う草間。言葉通り、過激なハ


プニングなどで60年代ヒッピーカルチャーをけん引した画家が、今は水玉のポップな彫刻など で若い人を


「カワイイ」と夢中にさせ、ファッションデザイナーをとりこにする。 ◎ 本質へのまなざし ◎


 新作展の中でひときわ目を引く自画像 「神をみつめていたわたし」 。火花が飛び散るような 「わ


たし」の瞳が、ひたと捉えるものは何か。  幼いころから、幻覚や幻聴、強迫観念に悩まされ、それらに立ち向かうとき、一心不乱に絵 を描いた。


「愛」 。自作の詩でこう言う。 「毎日毎日、自分の芸術の力で命をつないでいます。芸術があるから、今まで生きて


こられた」と草間は言う。  自殺願望にまで発展する自らの苦しみをさらけ出すことで、深い共感を呼び起こす。さらに自 己の救済だけで終わらないのが、草間の言う  


草間弥生「神をみつめていたわたし」 OTA FINE ARTS.)


(2011ⓒYAYOI KUSAMA, Courtesy of 草間弥生「大いなる巨大な南瓜」 (2011ⓒYAYOI KUSAMA, Courtesy of Victoria Miro Gallery, OTA FINE ARTS.)


(英国)など


欧米の主要美術館をまわる回顧展も開催。その合間に、続々と新作を発表している。現代美 術最大の才能の一人として評価を確立した


「水玉の女王」の、創造の源を探った。


「ニューヨークの舞台で並外れた地位を築いていた」 「草間に近い存在」としている。


「すべての人々に愛はとこしえと叫びつづけてきたわたし/そしていつも生きることに悩みつづ


け/芸術の求道の旗をふりつづけてきた」  宗教にも似た作家の信念から渾身の力で生み出されたからこそ、その絵は、強いエネルギー と希望を放つ。詩にはこう表現した。 うたい上げよう」


「あなたたちと一緒に宇宙にむかって/心から人間讃美を 記事&写真提供:共同通信社


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