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56 SAN DIEGO YU-YU


AUGUST 16, 2012


© kyodo


CLOSE UP 2012 野球人生の終盤、 転機迎えたイチロー 身を切る思いで決断、強豪球団へ


条件全て受諾したイチロー   ヤ軍GMが交渉過程明かす  ヤンキースのキャッシュ マン・ゼネラルマネジャー (GM) は7月24日、


マリナー


ズからトレードで獲得した イチローが、交渉過程でヤ ンキースが提示した条件を 全て受け入れたことを明らかにした。スポーツ 専門局、ESPN (電子版) の取材に答えた。  キャッシュマンGMによると、交渉ではイチ ロー側に守備位置の変更、下位打線での起用、 左腕との対戦では控えに回る可能性、の3条件 を伝え「(イチローは) 多くの犠牲を求められた が、全てを受け入れた」とした。  スカウト陣からはイチローの身体能力と守備 力は衰えていないとの報告を受けたと語り、


「最


低でも外野手の補強ができた。うまくすれば、 スーパースターを獲得したことになるかもしれな い」とコメントした。


環境変え刺激求めたい    寂しいし、難しい決断  目には光るものがあった。一点を見つめ、 強い口調で話したのはシアトルへの思いを断ち 切るためか。30分以上の長い会見で、


イチロー 「20代前半の選手が多いこのチームに、


 米大リーグ、マリナーズの看板選手として 12年目を戦っていたイチロー外野手 (38) = 本名鈴木一朗 = が、7月23日にメジャー屈 指の強豪ヤンキースへ電撃移籍した。昨季、 シーズン200安打の連続記録が10年で途切 れた希代の安打製造機が、野球人生の終盤で 大きな転機を迎えた。


刺激を求めた


 今季が5年契約の最終年のイチローには、 今オフに2つの選択肢があった。今のまま マリナーズに残留するか、新天地を求めるか。 前半戦を自己ワーストの打率 (2割6分1厘) で折り返し、選出されなかった球宴休みの 間に悩み抜いた。下した結論は


「前向きな挑


戦がしたい」だった。  マリナーズに残れば、引退後も球団の顔 としてファンの記憶に刻まれる。だが、当の チームは長期低迷から抜け出せない。自身 の大きすぎる存在が、再建を目指すチームの


再建球団には偉大すぎる存在 ヤ軍が求めた機動力と守備力 移籍後初試合は打順8番で出場


来年以降僕がいるべきではない」シアトルに骨を埋める覚悟を決めていたイチローの苦渋の決断だった (7月23日=シアトル・セーフコフィールド) 。


中で重荷になっているとも感じていた。考え るうちに「20代前半の選手が多いこのチーム の未来に、来年以降僕がいるべきではない。 そして僕自身環境を変えて刺激を求めたい、 という強い思いが芽生えた」


。移籍を申し出


る連絡は、代理人を通じてマリナーズのアー ムストロング球団社長へ伝えられた。


世界一への渇望


 3年ぶり、メジャー最多の28度目のワー ルドシリーズ制覇を目指すヤンキースが今季 年俸1700万ドル (約13億6千万円) のイチ ロー外野手に払うのは、移籍後の負担分と なる250万ドル (約2億円)だけ。“低リスク” で補強ポイントを埋められる絶好のトレード となった。  チームは長距離打者が並ぶ重量打線の中 で唯一、


俊足で守備力にも定評がある左翼手


のガードナーが負傷で戦列離脱。首脳陣はプ レーオフを見据え、機動力の高い選手を補 強する必要性を強く感じていた。ジラルディ 監督は「イチローのスピードと打者としての 能力を得られて興奮している」と喜びを隠さ なかった。  ヤンキースは野手の高齢化が進み、調子 を維持するために主力を休ませながら使う 必要もある。脚の速さと守備力を兼ね備え、


常時出場できるイチローは弱点を補完する最 高の選手。ヤンキースでは左翼が定位置とし て予定されている。


力はまだある?


 ここ2シーズンは打撃成績が下降線をた どっているイチローだが、守備や走塁では依 然として衰えは見られない。  ニューヨーク


・ タイムズ紙のデービッドウォ ・


ルドスタイン記者は「首位を争うヤンキース に移籍すれば、


新たな力を得て成績が上がる


期待も持てる」と分析する。  大リーグ事情に詳しい福島良一氏は「ヤン キースはスピードのある野手を探していた。 打撃に全盛時の力はないが、


足と守備は全く


衰えていない。左翼で起用されるようだが、 深い左中間の守備も問題ないだろう。移籍 後初試合の打順8番が示すように期待はそ う高くない。全盛時ならジーターを押しのけ て1番に入るはずだ」と、ヤンキースが期 待する役割は「走・守」だと見る。  また「38歳という年齢を考えるとそう長く プレーはできない。優勝の可能性のある名 門チームに入れば、環境の変化でモチベー ションも上がり、刺激にもなる。もうひと花 咲かせることができる。両者の思惑が合致 したのだろう」と推察した。■


は必死で涙があふれるのをこらえていた。 ―― 今の思いは。  


「11年半、ファンの方と同じ時間、思いを共


有したことを振り返り、自分がマリナーズのユ ニホームを脱ぐと想像したときに大変寂しい思 いになった。決断は大変難しいものだった」 ―― 決断の理由は。  


「20代前半の選手が多いこのチームの未来


を考えると、来年以降僕がいるべきではない、 そして僕自身環境を変えて刺激を求めたい、 という強い思いが芽生えた」 ―― 移籍するチームの希望はあったのか。  


「あったが、絶対的なものではなかった。僕


を必要としてくれるチームが大前提だった」 ―― 常勝チームだが。  


「一番勝ってないチームから一番勝っている


チームに行くわけで、テンションをどうしよう かと思う」 ―― ワールドシリーズに出たら。  


「その質問は僕にとっては時期尚早。長い間


野球をやってきて、プレーオフに出られたのは 2001年だけ。現段階で語る資格はない。これ からヤンキースでの時間を経て、そういう意識 が芽生えることを期待している」 ―― ニューヨークでの新たな挑戦は何か。  


「ジラルディ監督はインタビューの受け答え がうまい。僕も対策していかなくてはと思う」


ダルビッシュは驚き見せず    AL 東地区で迎える松坂  イチローのヤンキース移籍に他チームの日本選手 は様々な反応を見せた。レンジャーズのダルビッシュ は「メジャーなんでそういうこともあるでしょう」と驚 いた様子を見せなかった。レッドソックスの松坂は


「トレードでイチローさんがヤンキース入り!」とつぶ やいた。田沢は「驚きは驚きだが、特に変わることは ない。自分の力を試せたらいい」と話していた。


資料: 共同通信社


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