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70 SAN DIEGO YU-YU


JULY 1, 2012


アメリカ健康ノート (142) Medical


金 一東


夏の子供の健康 金 一東 日本クリニック・サンディエゴ院長


 夏になると、海や山へ出かけたり、野外 活動の機会が多くなります。気温は上昇し、 日光に当たる時間も長くなります。熱中症、 日焼け、脱水、水の事故など、様々な病気 や事故が多発するのも夏です。夏を健康に 過ごし、子供たちがのびのびと安全に遊べ るように、夏の事故・病気について理解し ておきましょう。


日焼け


 夏になると日差しがきつくなり、紫外線 の量が増加します。紫外線は日焼けを起こ すだけでなく、皮膚がんの原因にもなりま す。特に小児の皮膚は紫外線に弱いので、 しっかり紫外線から守るようにしましょう。  日焼け止めクリームは、UVA と UVB 両 方に効果のあるもので、水の中に入っても 大丈夫なもの (water resistant)、アレルギー の起こりにくいもの (hypoallergic)、匂いの ないもの (fragrance-free) を選びます。少 なくとも SPF 15 から 30 以上のものを選び ます。  日焼け止めクリームは外出する30分前に 塗ります。腕、足、顔など、部分ごとにしっ かり塗り、顔を最後にします (子供は顔に 塗られるのを嫌がることがあるので)。外 出している限り、


汗をかいたり、水に入ったりすると、その度 ごとに塗ります。曇りの日でも紫外線は降 り注ぐので、日焼け止めクリームを使います。 他の対策としては、日光が最も強くなる午 前10時から午後4時までの外出を控えた り、帽子、通気性のいい服、日傘、パラソル、 サングラスなどを利用して直接日光が当たら ないようにします。


虫刺され  夏は虫に咬まれやすい季節です。蚊やダ


ニなどに咬まれると、症状を起こすだけで なく、様々な病原菌を媒介して脳炎やライ ム病などの原因にもなります。野外活動を する時は虫除けスプレーやクリームを使い ますが、DEET または picardin の含まれた 虫除け薬を使います。ただし、DEET 30% 以上のものは使わないでください。  スプレーは直接顔に噴霧しないで、一旦 親の手に噴霧して、それを子供の顔に塗っ てあげてください。口の周り、目の周り、手 に塗るのは避けてください。子供の体内に 入ると有害です。自然の成分でできた虫除 けスプレーやクリームも存在しますが、効果 は弱くなります、そして自然のものだから安 全とは限りません。長袖の服やズボンの着 用で虫刺されを予防する方法もあります。


熱中症  暑い日に外で長時間遊び、 水分補給をしっ 最低2時間ごとに塗ります。


かりしないと熱中症になることがあります。 熱中症は高温環境下において生じる様々な 身体症状ですが、重症の場合は生命の危 険性さえ出てきます。外で遊ぶ時は水分を 十分取り、何度も休憩をさせます。例えば、 15〜20分おきに休憩をさせて水分を与えま す。  のどの渇き、足のひきつけ、疲れ、目まい、 吐き気、嘔吐、頭痛、発熱などの症状が出 た時は熱中症の可能性があります。涼しい 所に移動し (日陰で車のクーラーを使用す るなど)、衣服をゆるめるか脱がせ、水分 と塩分をあげ、それでも改善しない時は医 療機関に連れて行ってください。また、わ ずか数分でも子供を車の中に置いて出ては いけません。日中では車の中の温度が急上 昇する可能性があり、短時間の間に熱中症 が進行する恐れがあります。


水の事故 ■ 筆者閑談 「休日」  ここ最近、 休日は夏のトレッキングの準備のため、 トレーニン


グハイキングをしています。アメリカ人女性2人と共に早朝に 起き、重いバックパックを持って、


ハイキングをするのです。


日本クリニック医師。 神戸出身。岡山大学 医学部卒業。同大学院を経て、 横須賀米 海軍病院、宇治徳洲会等を通じ 日米プラ イマリケアを経験。その後渡米し、 コロン ビア大学公衆衛生大学院を経て、エール 大学関連病院で、内科・小児科合併研修 を終了。 スクリップス・クリニックに勤務 の後、現職に。 内科・小児科両専門医。


 毎年、830人以上の14歳以下の子供が 水の事故で亡くなっています。その水の事 故のほとんどが5月から8月の間に起こっ ています。自宅にプールのある人は、ゲー トを作るなどして子供が1人でプールにアク セスできないようにしておきます。子供を プールの傍や、プールで親の監視なく1人 で遊ばせてはいけません。例え子供が水泳 の仕方を知っていても、溺れないわけでは ないのです。  泳げない子供が深いプールで遊ぶ時は、 ライフジャケットを着せます。湖、川など で遊ぶ時もライフジャケットを着せてあげて ください。浮き具の使用では溺水を予防で きません。4〜5歳になったら水泳教室な どに通わせて、水泳の仕方を習わせましょ う。また、子供のいる親は、この機会に心 肺蘇生 (CPR) の講習を受けてみましょう。 Red Cross (赤十字) で講習が受けられます。


食中毒


 夏は食中毒を起こしやすい季節です。牛 肉、豚肉、鶏肉、卵などの生 (なま)やあ まり火の通っていないもの、外に長時間置 かれていた食べ物は要注意です。食事の前 に必ず手洗いをしましょう。残り物はなる べく早く冷蔵庫に入れます。果物、野菜は よく洗って与えます。賞味期限の過ぎた食 べ物はカビが生えてなくても捨てましょう。 生の貝類、デリーで作られたタマゴサラダ、 ポテトサラダ、チキンサラダなどは要注意 です。  キャンプなどの野外活動の際、山の水は どんなにきれいに見えても、


そのまま子供に


飲ませないでください。寄生虫や細菌に汚 染されている可能性もあります。また、


1歳


未満の子供にはハチミツを与えるとボツリ ズムのリスクになります。  生の肉とそれ以外の食物 (果物、野菜、 他のおかず) を扱うときは、共用の箸、 フォーク、皿などを使わないでください。 別々の箸などを使いましょう。  食中毒になると、嘔気、嘔吐、腹痛、下 痢、発熱などの症状が出てきますが、血便、 高熱、脱水、時間の経過と共に改善しない 食中毒は小児科を受診してください。


花火による事故


花火による事故は夏に多く起こります。


1,800


人以上の人が7月4日の独立記念日の前後 に救急室を訪れていますが、その半分近く は15歳以下の小児です。花火の事故では、 やけど以外にも目の事故などがありますが、 重症の場合は死の可能性も出てきます。  花火による事故を防ぐには、大人の監視 下に行う、近くに水を入れたバケツを置い ておくなどの方法がありますが、最善の方 法は花火を使用しないということです。因 みに、サンディエゴ郡では花火を所持する こと自体が違法ですので、気を付けてくだ さい。


事故の予防


 自転車、子供用スクーター、ローラース ケート、スケートボードなどを使って遊ぶ時 は、


トランポリンでの事故


 毎年9万人以上の人がトランポリン関連 の事故で救急室に行っています。トランポリ ンの事故を防ぐには、一度に2人以上の子 供を遊ばせない、子供に後方宙返りなどを させない、6歳以下の子供に大きなトラン ポリンで遊ばせない — —などで対処します。


隠れん坊


 子供が隠れん坊 (hide and seek) をして 遊ぶ時、車のトランク、家具、古いクーラー など、閉じこまれてしまう危険性のある場 所で隠れないように指導しましょう。


食事


 夏は食欲の下がる季節です。暑いからと いって、冷たいものばかり与えるのは健康に は良くありません。下痢、腹痛、食欲低下 の原因になります。夏でもバランスの良い食 事を与え、特定の食品に偏らないようにし ましょう。


X X X X X


この記事に関するご質問は日本クリニック ☎858-560-8910まで。過去の 康ノート」の記事は、


「アメリカ健 私のウェブサイト www. usjapanmed.com で読むことができます。 ヘルメットを着用させてください。また、


ヘルメット以外の安全装具も着用させてあ げてください。


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