54 SAN DIEGO YU-YU
JULY 1, 2012
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G7電話協議、欧米説得も思惑にズレ 円高による景気減速、消費増税に障害
日銀、追加緩和見送り 欧州債務問題を注視 日銀は6月15日 に開いた金融政策 決定会合で、政策金 利を0~0.1%とす るゼロ金利政策の維 持を全会一致で決 めた。追加金融緩和は見送られた。 ギリシャの再選挙など重要イベントが控えて いたため、追加緩和は温存し、国債などの資産 を買い入れるための基金の規模を70兆円で据 え置いた。金融資本市場で神経質な動きが続い ており、日銀は欧州債務問題の推移を「十分注 意深くみていく必要がある」と表明している。 景気の現状は「緩やかに持ち直しつつある」 とし、
「なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向
かう動きが明確になりつつある」とした前回会 合から判断を引き上げた。 金融資本市場は緊張感の高い状態となってい るが、東日本大震災からの復興関連需要などで 堅調な内需が下支えし、日本経済は緩やかな回 復傾向が続いている。 ギリシャの選挙結果などを受け、外国為替市 場や株式市場が混乱した場合は、金融システム の安定維持に向け、追加緩和や潤沢な資金供 給を行うなど、迅速な対応を取ることも確認し たとみられる。
日銀金融政策決定会合はゼロ金利政策の維持を決めて追加金融緩和を見送った。
日米欧の先進7か国財務相・中央銀行総裁 会議 (G7) が6月5日夜に行った緊急の電話協 議で、日本は円高阻止の為替介入に理解を得 ようと欧米の説得に全力を挙げた。景気の腰 折れは消費税増税の大きな障害になりかねな いためだ。しかし、欧米との思惑のズレが目 立ち、効果に疑問符が付く単独の円売り介入を またしても探ることになった。
だんまり
「ノーコメント」。為替政策を担当する安住淳 財務相は相変わらず記者団の問い掛けに素っ 気なかった。
「断固たる措置を取る」と介入を
示唆する “決めぜりふ” を連発していた安住氏 だが、米雇用統計の悪化と欧州債務危機の深 刻化が相まって急速に円高が進んでからは態 度が一変した。 介入の前後は財務相の口が堅くなるのが通 例。今回もだんまりを決め込むことで、市場に 「介入があるかもしれない」との警戒感を植
無言の財務相に欧米が警戒感 ¥1上昇で年間利益60億円消失 効果乏しい日本単独の為替介入
ギリシャの再選挙後に円高阻止に向けた政府と日銀の連携プレーが再現する可能性も (6月15日)
え付け、円高を食い止める作戦に出たようだ。 外国為替市場では電話協議後、円売りが優勢 になった。
声明を提案か
政府には円高への懸念がこれまで以上に強 い。野田首相が政治生命を懸ける消費税増税 は「経済状況を好転させる」ことが条件。円 高が日本経済の原動力の輸出を鈍らせ、東日 本大震災の復興事業に支えられた景気が変調 を来せば、増税に向けた不確定要素がもう一 つ増えることになる。 このため、安住氏はG7の電話協議で、介 入に理解を得ようと必死に欧米を口説いた。 政府関係者によると、日本は協議後に共同声 明を発表することを欧米各国に提案したもよ う。G7が強いメッセージを打ち出せば、円を 売ってドルやユーロを買う動きが強まるとみた ためだ。 円高の元凶である欧州危機の解決に向け、 協調行動を取ることを声明に盛り込むよう求 めた形跡もあった。だが、声明の発表は結局 見送られ、協議では「為替の過度な変動は経 済に悪影響を与える」との一般論を欧米各国 に確認させるだけにとどまった。 米財務省が昨年末に
「日本の介入を支持しな
かった」とする外国為替報告書を公表するな ど、欧米には当局が相場を操作する介入への
抵抗感が強い。G7の協議でも欧米からは介入 に否定的な意見が出されたとみられ、日本の 主張がどこまで受け入れられたかは不透明だ。
日銀と連携も
とはいえ、経済界からは「このまま円高が 続けば、日本から輸出していたものを海外生 産に移さざるを得ない」 (大手電機メーカー) との悲鳴が上がっている。ソニーは円高ユー ロ安が1円進行すると、年間の連結営業利益が 60億円吹き飛ぶ。介入を待ち望む声は日増し に大きくなっている。 政府は昨年8月4日と10月31日、日本単 独で巨額の円売りドル買い介入に踏み切った。 単独介入の効果は長続きしないことが多く、 介入の前後には日銀が追加金融緩和でバック アップした。追加緩和で金利が下がると円の 魅力が薄れ、
介入を受けた円安の流れを強める
効果があるとされる。 市場では「政府が介入に動けば、再び金融 緩和で側面支援する可能性が高い」
系エコノミスト) との見方が多かった。日銀は 6月14、
15日に金融政策決定会合を開き、 結論
として追加金融緩和を見送った。欧州情勢が 大きく動く可能性があるのはギリシャ再選挙 後。選挙の結果如何 (いかん) では、円高阻 止に向けた政府と日銀の連携プレーが再現す るかもしれない。■
(証券会社
ユーロ安の恩恵広がらず 欧州製品、ブランド維持 欧州危機の再燃で歴史的なユーロ安が続いて いるが、日本国内の百貨店やスーパーなどで欧州 からの輸入品の値下げはあまり広がっていない。 欧州製品は “高級ブランド” が多く、急激な価格 変動によって築き上げたイメージを崩したくない 思いがメーカー側に強いためだ。高額品の主要顧 客が富裕層という市場の特殊性も背景にある。 欧州で金融不安が高まるにつれユーロは対円 で売られ、
5月下旬には東京外国為替市場で1ユー
ロ=100円を割った。懸案だったスペイン支援に 一定のメドが立ったとして6月中旬には大台を一 時回復したが、依然として先行きは不透明。 円高が進んでも、輸入車を値下げする動きは みられない。ドイツ自動車大手BMWの日本法人
「ビー・エム・ダブリュー」 (東京) のローランド・ クルーガー社長は
「高級車市場で重要なのは価格
の安定性。ブランドの価値は維持されると、顧 客を安心させることが重要だ」と説明。為替変 動によって価格を変えることはないと明言する。 逆に、婦人服の高級ブランドの仏セリーヌは店 頭価格を値上げした。モエ・ヘネシー・ルイ トン (LVMH) 傘下のセリーヌジャパンは
・ヴィ 「品質を高
めブランドイメージを維持するためだ」と話す。 高島屋は今年1月、欧州から直輸入した食品や 婦人服などの一部を1割程度値下げしたが、直 近のユーロ下落を受けてセールに取り組んでいる 大手百貨店はない。ある百貨店の担当者は
「3~
6か月前に買い付けており、短期的な為替変動で は値段を変えにくい」とする。 フランスなど欧州産ワインも
「中国など新興国
の需要が増え、買い付け価格は必ずしも下がっ ていない」 (別の食品スーパーの担当者) という。 事前に為替の決済レートを一定期間決めておく
「為替予約」が輸入業者の間で普及したことも、 消費者に恩恵が及びにくい要因となっている。
資料: 共同通信社
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