70 SAN DIEGO YU-YU
MAY 16, 2012
CLOSE UP 2012
TPP 明言せず同盟深化の確認へ 首相、
日米中3か国戦略対話を提案
野田首相帰国、前途険しく TPP「板挟み」
、 普天間 「重荷」
野田首相は5月2 日午後、ワシントン での日米首脳会談を 終えて帰国した。政 府はオバマ大統領が 求める環太平洋連携 協定 (TPP) の正式交 渉参加に向け、関係閣僚会合の早期開催の検討 に入る。ただ、
民主党内の反対論と板挟みとなる 日米首脳会談を前にワシントン・ポスト紙は野田首相を「合意を着実に積み上げるタイプ」と評価。“短命” の危機を乗り越えればオバマ大統領の良い協力相手になると分析している
野田首相は4月29日午後、羽田空港発の政 府専用機でワシントンへ出発。現地時間の30日 (日本時間5月1日)、民主党政権では初めてホ ワイトハウスでの日米首脳会談に臨んだ。出発に 先立ち、首相は空港で記者団に「オバマ大統領 と激変するアジア太平洋の中での日米同盟の今日 的な意義を確認し、将来に向けてのビジョンを 忌憚なく意見交換したい」と強調した。環太平 洋連携協定 (TPP) については「交渉参加のプロ セスにある状況を踏まえて議論する」と述べる にとどめた。
連携と棚上げ
日米首脳会談のポイントは次の通り。 ① 沖縄県の米軍普天間飛行場を名護市辺野古 へ県内移設する現行計画推進の確認を避け、移 設問題を棚上げ。 ② 北朝鮮による核実験阻止に向けた連携で一 致。中国の役割が重要との認識を共有。 ③ 野田佳彦首相は環太平洋連携協定 (TPP) 交 渉への参加表明を見送り、米側と事前協議を前
普天間飛行場移設の確認回避 車・保険・牛肉の市場開放努力を 大統領の3分野言及に党内反発
進させたいと表明。 ④ オバマ大統領はTPPに関し、自動車、保険、 牛肉の3分野での市場開放努力を注視。 ⑤ イランの核開発問題やミャンマーの民主化改 革で協力。 声明では日米同盟を「アジア太平洋地域の安 定と繁栄のための公共財」と位置づけ、この地 域の安全保障や経済分野での秩序づくりを日米 で主導すると表明。海洋進出を図る中国の動き をにらみ、自衛隊と米軍が警戒監視活動で連携 を強化する
「動的防衛協力」の推進も盛り込ま
れた。 TPP交渉について、首相は米国との事前協議 加速を確認したい考えだが、民主党内の反対論 に配慮し、出発前の談話通り、交渉参加の正式 表明は見送られた。 宇宙やサイバー空間を新たな協力領域と位置 づけ、国際的なルールづくりでの連携も声明に 明記された。
参加日程に踏み込まず
両首脳はTPP交渉参加に向けた2国間協議を 進展させるため、双方が努力することで一致した。 会談で、オバマ大統領は「米国内では自動車、 保険、牛肉の3分野に関心が高い」と従来の見 解を伝えたほか、特に自らが主導し政府管理下 で経営再建を果たした米自動車業界について説 明。3分野での日本による市場開放努力を注視
する考えを示した。 これに対し、野田首相は「日米が協力し貿 易、投資に関する高い水準のルールをつくる 意義は大きい」とし、早期に交渉に加わり日 本の意見を協定に反映させる必要があると主張。 日本国内の意見調整が続き正式な参加表明は先 送りしたが、参加を目指す自らの考えは変わっ ていないと強調した。
中国を取り込む
また、野田首相は日米中3か国による戦略対 話の立ち上げをオバマ大統領に提案した。日米 共同声明が盛り込んだアジア太平洋地域での海 洋や経済をめぐるルールづくりで中国を取り込 む狙い。 首相は日米が主導した秩序の必要性に触れ
「中国とも協力し、国際社会のルールに取り込む ことが重要だ」と指摘。日本政府筋によると、 オバマ氏は中国が国際社会で役割を果たすこと に期待を示したものの、戦略対話について明確 な見解は示さなかった。 日米中戦略対話をめぐっては、昨年12月に玄 葉光一郎外相とクリントン米国務長官が創設方 針で一致している。
ワシントンで公式の日米首脳会談が開催され たのは2009年2月の麻生太郎首相 (当時) 以 来、3年2か月ぶり。■
大統領の良い協力相手に 米紙、首相難題克服なら ワシントン・ポスト紙 (4月20日付) は野田首相 の訪米を前に、消費税増税関連法案など難題に 直面する首相は短命に終わる可能性もあると指摘 しつつも、乗り越えられればオバマ大統領の良い 協力相手になると分析する論説記事を掲載した。 記事では、
「米国で歓迎されている」と強調。 の他の2人の首相とは違い、
日米同盟重視の首相は堅実性があり 民主党政権で
導者の政治スタイルに回帰していると指摘し、
自民党政権時代の指 合
意を着実に積み上げる地味なタイプと分析した。 ただ内閣発足以後、
首相の支持率は低下してお
り、小沢一郎元民主党代表を念頭に民主党内の 対抗勢力などが倒閣を目指していると懸念した。 その上で、オバマ大統領との会談後も
「首相の
座に (長く) いられない可能性もある」との見方 を披露。ただ難題を克服できれば、
国を 「より助けてくれる」と予測した。 資料: 共同通信社 日本と同様、
財政問題に悩む民主主義国のリーダーにとっての お手本になり、
中国に対処しなければならない米
のは確実で、消費税増税関連法案を重視する首 相が参加手続きを進められるかは微妙な情勢だ。 「大変有意義だった」。首相は帰国後、官邸で 記者団に訪米の感想をひと言だけ語った。 今回の首脳会談に伴う2006年以来の共同声 明は「アジア太平洋地域の貿易・投資に関する 高い水準の (自由化) ルールを築く」と明記し つつ、TPPに関しては「2国間協議を引き続き 前進させる」との記述にとどまった。当初、訪 米前の閣僚会合で交渉参加決定を想定していた が、増税法案や原発再稼働による党内亀裂の拡 大を防ぐため先送りした結果だ。 首相サイドでは経済産業省を中心に 「TPP ルールづくりを主導する必要がある」との声が 強い。9月にロシアで開かれるアジア太平洋経 済協力会議 (APEC) 首脳会議の際に参加表明す る日程を描く。米議会承認手続きにかかる約90 日を計算に入れると、6月には民主党の了承手 続きを終える必要がある。 だが、会談で大統領がわざわざ
牛肉」の3分野に言及して市場開放を求めたこ とで、民主党内の反発が強まるのは必至だ。 一方、首脳会談で米軍普天間飛行場 (沖縄 県宜野湾市) の名護市辺野古移設推進の確認 を避けたことも野田政権の「重荷」となる。沖 縄県の仲井真弘多知事ら沖縄側が県外移設の 主張を強める可能性が高いからだ。 首相は5月15日に開かれる沖縄本土復帰40 周年式典など、月内に2回沖縄入りする予定。 首相側近は「知事に会談結果をどう説明するか 悩ましい」と漏らした。
「自動車、保険、
Page 1 |
Page 2 |
Page 3 |
Page 4 |
Page 5 |
Page 6 |
Page 7 |
Page 8 |
Page 9 |
Page 10 |
Page 11 |
Page 12 |
Page 13 |
Page 14 |
Page 15 |
Page 16 |
Page 17 |
Page 18 |
Page 19 |
Page 20 |
Page 21 |
Page 22 |
Page 23 |
Page 24 |
Page 25 |
Page 26 |
Page 27 |
Page 28 |
Page 29 |
Page 30 |
Page 31 |
Page 32 |
Page 33 |
Page 34 |
Page 35 |
Page 36 |
Page 37 |
Page 38 |
Page 39 |
Page 40 |
Page 41 |
Page 42 |
Page 43 |
Page 44 |
Page 45 |
Page 46 |
Page 47 |
Page 48 |
Page 49 |
Page 50 |
Page 51 |
Page 52 |
Page 53 |
Page 54 |
Page 55 |
Page 56 |
Page 57 |
Page 58 |
Page 59 |
Page 60 |
Page 61 |
Page 62 |
Page 63 |
Page 64 |
Page 65 |
Page 66 |
Page 67 |
Page 68 |
Page 69 |
Page 70 |
Page 71 |
Page 72 |
Page 73 |
Page 74 |
Page 75 |
Page 76 |
Page 77 |
Page 78 |
Page 79 |
Page 80 |
Page 81 |
Page 82 |
Page 83 |
Page 84 |
Page 85 |
Page 86 |
Page 87 |
Page 88