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アメリカ健康ノート


第134回  大人もかかる 子供の感染症


 子供の感染症は免疫がなければ大人でもかか ります。日本で大学生の間に麻疹 (はしか) やお たふく風邪の流行が起こり、アメリカで大人の 間で百日咳の流行があったのは、まだ記憶に新 しいところです。  一般的に、小児感染症は子供の時に感染する 方がより重症化しますが、中には、大人になっ て感染する方がより深刻になるものもあります (例:おたふく風邪)。


子供の感染症


 子供に多い感染症は、免疫のない大人にも感 染するわけですが、これにはいくつかのパター ンがあります。


①子供の時にかかっているはずの病気にか かっていなかった (例:伝染性紅班)。②子 供の時はワクチンを受けて予防されていた が、時間とともにワクチンの効果が薄れてき た (例:百日咳)。③比較的新しいワクチンで 接種を受けている子供が感染しなくなった代 わりに、接種を受けていない大人が感染する ようになった (例:インフルエンザ桿菌=か んきん= Hib による髄膜炎)。④感染しても、 また何度も感染する (例:アデノウイルス感 染症)。⑤子供と接触が多いため (例:溶連菌 感染症)。⑥ワクチンを受けたが免疫がつかな かった。


各感染症についての説明


 子供に多い感染症の代表的なものについて簡 単に説明します。そして、説明の後に、原因や 潜伏期間などを項目ごとにまとめますので、そ れも参考にしてください。 ①原因。②主な感染様式 (飛沫感染とあって も、直接感染でも起こることも多いのです)。 ③潜伏期間。④症状。⑤合併症。⑥学校、会 社を休む期間。⑦治療法。⑧予防法。 *注:病名は、日本語医学名 (日本語一般名) =英語医学名 (英語一般名) の順です。 ▽麻疹(はしか)=Measles (Rubeola)   はしかは、ワクチンが始まる前は、世界中で 毎年200万人以上の犠牲があった重症化する可 能性のある感染症です。アメリカでは主に、外 国人やワクチンを受けていないアメリカ人が外 国から持ち込んで感染します。 ①麻疹ウイルス。


②飛沫。 ③10〜12日。


Rubella (German measles)  子供は発疹から始まりますが、大人は微熱やリ ンパ節の腫脹 (しゅちょう) から始まります。成 人女性の場合、指、手首、膝の関節痛から始まる ことがあります。 ①風疹ウイルス。


②飛沫。 ③2〜3週間。


微熱。⑤脳炎 (大人)、先天性風疹症候群 (新 生児)。⑥発疹が出て5〜7日間 (発疹の出る 数日前より感染性あり)。⑦対症療法。⑧風疹 ワクチン (MMR)。


▽水痘(水疱瘡:みずぼうそう)= Varicella (Chickenpox)  ワクチン接種が始まる前は、アメリカでは毎年 50人程度の子供と、同数程度の大人が亡くなって いました。 ①水痘・帯状疱疹ウイルス。②飛沫、接触。③ 2〜3週間 (発疹の出る1〜2日前から感染性 あり)。④水疱を伴う発疹、発熱、かゆみ。⑤ 皮膚の細菌感染、肺炎、脳炎。⑥すべての発 疹が痂皮 (かさぶた) 化するまで。⑦抗ウイル ス薬⑧水痘・帯状疱疹ワクチン。


▽伝染性紅班(りんご病=Erythema Infectiosum (Fifth disease, slapped cheek)  子供では発熱のない場合もありますが、皮疹は 出ます。逆に、成人では皮疹がなく、頭痛、発熱、 関節痛および関節炎だけのことがあります。指、 手首、膝、足首、肩などの関節の腫れや痛みが起 こります。


④発熱、 金 一東 日本クリニック・サンディエゴ院長


日本クリニック医師。 神戸出身。岡山大学医 学部卒業。同大学院を経て、 横須賀米海軍病 院、宇治徳洲会等を通じ 日米プライマリケア を経験。その後渡米し、 コロンビア大学公衆 衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、 内科・小児科合併研修を終了。 スクリップス・ クリニックに勤務の後、現職に。 内科・小児 科両専門医。


咳の後に発疹⑤肺炎、中耳炎、脳炎。⑥発疹 が出て4日間 (発疹が出る4日前から感染性 あり)。⑦対症療法、ガンマーグロブリンの注 射。⑧麻疹ワクチン (MMR)。  ▽流行性耳下炎(おたふくかぜ)=Mumps  主に幼児から学童期の病気ですが、大人の場 合、子供よりも脳脊髄膜炎や睾丸 (こうがん) 炎 を起こしやすくなります。 ①ムンプスウイルス。②飛沫。③16〜18日。 ④発熱、耳下腺の腫脹。⑤難聴、脳炎、睾丸炎。 ⑥耳下腺炎が出現して5日間 (耳下腺炎が腫 れる1〜2日前から感染性あり)。⑦対症療法。 ⑧おたふくワクチン (MMR)。 ▽風疹(三日ばしか)=


①エリスロウイルス。②飛沫③1〜3週間。④ 両頬の発疹、発熱、関節痛。⑤貧血、流産 (妊 娠初期の女性)。⑥必要なし (症状の出る前の 約1週間が最も感染性がある)。⑦対症療法。 ⑧ワクチンは存在しない。 ▽百日咳=Pertussis (Whooping cough)  アメリカでも日本でも大人の感染が問題になっ ています。発症して最初の1〜2週間の症状は風 邪と大差なく、診断が困難で、その間に感染が広 がります。乳児が感染すると無呼吸の原因になり、 重症化し死亡することもあります。 ①百日咳菌。②飛沫。③7〜10日。④風邪症 状 (最初の1〜2週間)、それから激しい咳、 乳児は無呼吸。⑤肺炎、けいれん、無呼吸。⑥ 最低、咳が始まって2週間。⑦抗生物質。⑧ 三種混合ワクチン (子供は DTaP、思春期の青 少年と大人は Tdapを)。 ▽溶連菌感染症=


Streptococcal pharyngitis (Strep throat)  溶連菌感染症は学童期の子供に多い病気です が、子供と接触のある成人も感染します。家族内 感染も一般的で、家族全員が感染することもあり ます。 ①A型溶血性連鎖球菌。 ④咽頭痛、


接触。 発熱。⑤リューマチ熱、


⑥抗生物質を服用して24時間。⑦抗生物質 (ペ ニシリン)。⑧ワクチンは存在しない、手洗い など。


▽RSウイルス感染症=RSV infection  RSウイルス感染症は乳幼児に細気管支炎や肺 炎を起こし、1歳未満の子供の肺炎と細気管支炎 では最も多い原因です。時には重症の呼吸不全の


原因になります。大人が感染しても、風邪とほと んど区別がつきません。 ①RSウイルス。②飛沫。③2〜8日。④咳、


④発疹、


発熱、


鼻水。⑤肺炎、重症呼吸不全。⑥3〜8日。⑦ 生食水の吸入、気管支拡張薬、抗ウイルス薬。 ⑧ワクチンは存在しない、手洗いなど。 ▽アデノウイルス感染症=  Adenovirus infection  アデノウイルスは肺炎、流行性結膜炎、咽頭結 膜炎 (プール熱)、


胃腸炎などを起こすウイルスで、


主に学童期以下の子供の病気ですが、大人でもか かります。ウイルスの型によって起こる症状が異 なってきます。52種類以上の型があるので免疫が できにくいのです。 ①アデノウイルス。②飛沫、直接、水など。③ 2〜14日。④咳、下痢などいろいろ。⑤急性呼 吸不全。⑥数日程度。⑦対症療法。⑧手洗い、 タオルやコップの協同使用を避ける、など。 ▽ロタウイルス胃腸炎(冬期乳児嘔吐下痢症) = Rotavirus infection


 ロタウイルスは主に冬期に乳幼児の下痢の原因 になるウイルスで、大人も感染しますが症状は小 児より軽めです。症状の程度は様々ですが、下痢 が続くと便の色が白色になってきます。 ①ロタウイルス。②糞便から。③2日程度。④ 下痢、発熱、腹痛。⑤脱水、電解質異常。⑥2 〜8日。⑦水分補給、


対症療法。⑧ワクチン (生


後15週未満で始めます)、手洗い。 ▽手足口病 =Hand, Foot, and Mouth disease =HFMD  5歳以下の小児に多い病気ですが、大人も感染 します。ヘルパンギーナと症状はよく似ています。 ①コクッサキーウイルスA16、エンテロウイル ス71など。②直接、


飛沫。③3〜7日。④発熱、


水疱、咽頭痛。⑤ウイルス性髄膜炎。⑥数日。 ⑦対症療法。⑧ワクチンは存在しない、手洗い。 ▽ヘルパンギーナ=  Herpangina (mouth blisters)  口内に水疱、


時々成人にも起こります。夏に多く、夏風邪の一 つです。子供は口内が痛いので食事や水分を取る のをいやがります。


①コクサッキーウイルスA16、エンテロウイル ス71。②飛沫、糞便。③4〜14日。④発熱、 口内の痛み。⑤脱水。⑥数日。⑦対症療法。⑧ ワクチンは存在しない、手洗い。 X X X X X


※この記事に関するご質問は日本クリニック ☎ 858-560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」 の記事は、私のウェブサイト www.usjapanmed.com で読むことができます。


②飛沫、 ③1〜3日。 猩紅熱、


腎炎。 筆者閑談「読書の秋」


 古今東西の文学が好きで読書三昧だっ た高校生時代の反動なのか、今は医学書 以外の本はほとんど読みません。他の活 字も新聞を除いて、ほとんどネット上の ものです。


潰瘍 (かいよう) を生じる感染症で、


66 SAN DIEGO YU-YU


NOVEMBER 1, 2011


Medical


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