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CLOSE UP 2011


日本発建築運動の実績を再評価 縮小社会の到来と未来都市の在り方


世界的建築解体から4年    問われる現代建築保存  戦後日本を代表する 建築の一つだった東京・ 銀座の民間集合住宅


「中銀カプセルタワー ビル」 (*写真=当時) が、老朽化やアスベス ト (石綿) の使用を理 由に建て替えられてから4年。


「中銀カプセル」


に象徴されるように、国際的に評価されてき た建物の運命は変わりつつあり、現代建築の 保存をめぐる課題も浮き彫りにしている。 * * * * *


「メタボリズムの未来都市展」で展示されている黒川紀章さんの「東京計画1961―Helix計画」の 模型=東京・六本木の森美術館 (2012年1月15日まで開催)


 世界各地で大型のプロジェクトを手掛け、活 躍が際立つ日本の建築家。日本発の建築運動 「メタボリズム」を回顧する展覧会や、東日本大 震災後の取り組みなどを紹介する国際会議が開 かれ、その実績があらためてクローズアップされ ている。情報化や環境問題など、刻々と変化す る社会情勢や都市構造に応じて、建築家たちは 最適な都市の在り方を模索している。


「メタボリズム」


 東京湾に広がる塔状の建物群や、巨大な空中 都市 ―― 。東京・六本木の森美術館で開催中の


「メタボリズムの未来都市展」 (2011年9月17日 〜2012年1月15日) は、戦後の復興を経験し た建築家たちが1960年代に描いた未来都市の 姿を紹介する。  高度経済成長で都市部への人口流入が続いた 時代。土地の不足を解消する “切り札” が海上 や高層化による生活圏の拡大だった。黒川紀章 (1934-2007) や 槙文彦 (1928-) らのグループによ る運動は、部分の取り換えができるデザインを推


丹下、 黒川、槙の偉大なる構想


建築家でありながら社会思想家 震災復興への空間構成力に期待


38 SAN DIEGO YU-YU NOVEMBER 1, 2011


奨していたことから、生物学で「新陳代謝」を 意味する 「メタボリズム」と名付けられる。戦後、 初めて日本から世界に発信した建築運動だった。  それから半世紀。巨大都市の計画は実現せず、 後年に 「楽観的な技術信仰だった」


と批判もされ


た。展覧会では、運動の中心メンバーを輩出し た丹下健三 (1913-2005) までさかのぼり、その 系譜をたどる。企画者の一人、八束はじめは「国 家や社会全体に対し、建築家が野心をもってい た時代。建築という領域を超えた広いコラボレー ションがあった」と指摘する。  政治家、官僚、デザイナー、批評家…。多彩 な顔触れを巻き込み、活発に議論が交わされた という。中国で大規模開発に取り組む建築家の 劉域 (りゅうゆ) は「1960年代の丹下は社会思 想家だった。建築家は建物を造るだけという意 識から脱しないといけない」と主張した。  若手の藤村龍至 (りゅうじ) は計画のスケール や実現性ではなく、運動の質に着目。人口減や 高齢化による “縮小社会” に対応した「新しい建 築家像が必要」と訴える。分析力と構想力に加 えて、半世紀前のメタボリストたちのような大き な想像力が求められている ―― とした。


自然と親密な関係を


 9月下旬、東京都内で開かれた第24回世界 建築会議「UIA (国際建築家連合) 2011東京大


会」。日本では初めての開催で、110の国と地域 から約5,100人が参加した。  主要テーマは 「DESIGN 2050 ―― 災害を克服 し、一丸となって、新しい未来へ」


。被災地での


活動例も報告され、復興計画が行政と土木コン サルタントを中心に進められて建築家の関与が 限定されている課題が繰り返し指摘された。建 築家による復興支援のネットワーク


「アーキエイ


ド」の発起人の一人、東北大教授の小野田泰明 は「空間を構成する建築家が都市計画にどう役 立つかを考える上で、震災後の活動からヒント が引き出せるのではないか」との見方を示した。  その象徴的なケースが、岩手県釜石市の復興 計画に顧問として参加する伊東豊雄。伊東は従 来より高い堤防を造るという発想ではなく、樹 木を植えたり、ラグビーのスタジアムに防潮堤の 役割を持たせたりするアイデアを報告。


「自然と


人の間に親密な関係を築くことこそ21世紀型の 在り方ではないか」とした。  今回の大会で特別賞が贈られた坂茂は、阪 神大震災や海外の被災地で仮設の教会などを手 掛けてきた。避難所でプライバシーを保つため、 紙の管と布で仕切りを作る取り組みなどが評価 された。被災地での活動はライフワークと話す。  外に向け、再び発信し始めた日本の建築家た ち。変化の萌芽が伸長するかのように、震災後、 さまざまな場で議論や試行錯誤が続いている。 (敬称略)■


 中銀カプセルタワーは、黒川紀章さんの設 計で1972年に完成。11階建てと13階建ての 2棟が一体となった建物は、四角い箱を積ん だような個性的外観で知られた。  箱状のカプセルの一つ一つが分譲ワンルー ムマンションの1戸に相当。床面積わずか10 平方メートルだが、作り付けの家具に基本的 な電器製品も納まり、ビジネスホテルの趣が あった。計140戸が単身者の住戸や事務所な どに使われていた。  特徴はカプセルを着脱交換可能とした考え 方にあった。カプセルは工場でつくられ、建 設現場では建物の中心の塔にボルトで取り付 けるだけ。カプセルごとの転居や旅行もできる 仕組みが斬新的だった。  思考の背景には、黒川さんが一翼を担った 建築運動「メタボリズム (代謝)」が存在し、 新たな建築や都市の在り方を、代謝を重ねて 成長する有機体に求めた運動を具現化したの が中銀カプセルタワーだった。  「世界で日本の建築家が評価されているが、 メタボリズムは日本の影響が世界に及んだ最 初の建築思想。その代表作が中銀カプセルタ ワーだった」と、解体後に建築史家の鈴木博 之東大教授が歴史的な先駆性を強調していた のを思い出す。


* * * * *


 日本には築50年以上の近代建築が対象の 文化財登録制度はあるが、現代建築保存を支 援する公的制度はほとんどない。  近代建築の保存に取り組んでいる国際組織


「DOCOMOMO (ドコモモ)」の日本支部幹事 長を務める兼松紘一郎さんは、


「50年経てば


歴史的評価が定まるだろうという考え方は分 かる。だが、それ以前に建物が壊されるケー スには全く対応できていない」と指摘する。  集合住宅の再生事業に詳しい松村秀一東大 助教は、日本と欧米の公共意識の差異を挙げ る。


意味を持つ。


「優れた建物はその都市の景観や歴史に 自分の土地だから勝手に建てたり、


壊したりしていいわけではない。建築物には公 共性がある」  中銀カプセルタワーのような価値の高い建 物は、英米では「ランドマーク指定」を受けて 保存されるのが普通という。  松村助教は、


近現代建築を保存する社会的な


意思が日本社会で弱いという背景に歴史的な 断絶をみる。  「欧米ではギリシャ・ローマから現代まで建 築の流れが続いているが、日本では伝統建築 と近代建築は文化的にも技術的にも連続性が ない。明治以降の建築は心の底からの共感、 愛着を持たれていない気がする」  そこには、近代のスクラップ・アンド・ビルド の発想の中で、西洋建築を扱ってきた日本の 社会のありようも現れているように見える。


資料: 共同通信社


© Kyodo


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