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奇岩に「蜂の巣」


作る民


ロバの歩み、清流で癒やし イラン・キャンドバン


ひんやりと涼しい。斜面の中腹にある家は上 るだけでも一苦労。台所に鎮座する大きな冷 蔵庫は一体どうやって運んだのだろう。


高い防御力


 キャンドバンの奇岩にいつごろから人が住 み始めたのかは正確には分からない。13〜 14世紀にモンゴル軍が一帯を侵攻した際、 人々は既に岩の中に住んでいたという。  


「円すい形の家々が隣接していることと、斜


面が急であることが防御力を高めている」と 村の案内パンフレット。岩の家はオオカミな どの野生動物から身を守るにも都合が良かっ た。


内で壁を照らす照明が温かみを感じさせる。 ベッドに寝転がり天井を見上げると、岩肌に 包まれるような安心感を味わった。  高台の岩の中にあるホテルのレストランで、 大きな肉団子などタブリーズの郷土料理と美 しい丘陵地の景色を楽しむ。  ペルシャの伝統弦楽器セタール奏者のアサ ドラさんが弾き語りをしてくれた。「家をきれ いにして、お茶を入れて。それでも彼は来な いかもしれない」


が、満天の星空に響いた。


。物悲しい調べの失恋の歌 (共同)


連なる奇岩に人々が住む=イラン・キャンドバン(ムハンマド・ガレバグ撮影)


 とけかかったソフトクリームがいくつも連 なったような奇岩群の村に入ると、おとぎ話 の世界に迷い込んだ気分になった。荷物を背 負ったロバが狭い岩の斜面を黙々と歩み、聞 こえるのは鳥の声と清流の音。時が止まって いるかのようなイラン北西部の村、キャンドバ ンを訪れた。


X X X X X X X X X X X X X X 斜面も平気


 丘陵地に張り付くような奇岩群は、村の南 東部にあるサハンド山(約3,700メートル) の火山活動で積もった溶岩が雨風に浸食され て形成された。トルコの世界遺産


「カッパドキ


ア」と同じだ。  ただ、こちらの方がずっとこぢんまりしてい る。林立する高さ30〜40メートルの岩の


満天の星空


娘を抱くロミン・ナセリさん=イラン・キャン ドバン


 家々の入り口は、人1人がやっと通れる急 な階段や斜面を上った先にある。民族工芸品 を売るロミン・ナセリさん(25)は


「みんな慣 洞窟ホテルの室内=イラン・キャンドバン 30 SAN DIEGO YU-YU NOVEMBER 1, 2011


れているから急斜面も平気。岩の家は夏は涼 しく、冬は暖かくて快適だよ」。  観光客にドライフルーツや薬草を売るロガ イエさん(28)に家の中を見せてもらった。簡 素な造りで思ったより天井が低いが、確かに


 村の北約50キロのタブリーズまで足を延 ばす。


トルコやアゼルバイジャンの国境に近く、


19世紀には対ロシア外交の拠点、対欧交易 の中継地点としてにぎわった、東アゼルバイ ジャン州の州都だ。  中東でも有数の規模だというバザール(市 場)を歩く。貴金属や香辛料、ペルシャじゅ うたんが所狭しと並ぶ。絵画やイスラム教の 聖典「コーラン」


の一節を織り込んだ美しいじゅ


うたんも売られていた。  キャンドバンに戻り、洞窟ホテルに投宿。 奇岩をくりぬいた部屋に泊まれる。清潔な室


内部をくりぬいた住まいに、羊の放牧や農業、 観光業で生計を立てる176世帯、約600人 が住む。


バザールで売られている美しいじゅうたん=イラン・ タブリーズ


  「キャンドバン」はペルシャ語で「蜂の巣」


を意味する。手掘りで岩の中をくりぬく住民 を、巣作りをする蜂の姿に例えたのだ。そう いえば、付近の町では養蜂も盛んだ。  村を流れる清流で馬が喉を鳴らして水を飲 んでいた。ミネラルを含んだ湧き水は健康に いいといわれ、専用の水くみ場でペットボトル を満たす観光客も多い。飲んでみるとまろや かで、かすかに甘みがあった。


村の階段を上る親子=イラン・キャンドバン イランのトルコ人?


 キャンドバン村の人たちは本来の母語で あるトルコ語系の


「アゼリ語」 を好んで話し、


学校で教わるペルシャ語を話さない。イラ ン人というよりもトルコ人という意識が強い という。  伝統的でイスラム教の戒律を重んじる 暮らしをしており、女性は10代で結婚す る人が多いという。既婚女性は花模様の 大きな布で体や髪を覆い、


「夫に怒られる


から」と写真に撮られるのを極端に嫌がる。  簡素な家々に不似合いな衛星放送受信 用のパラボラアンテナがそこここに取り付 けてあったのが印象的。ナデル・ファトホ ラヒ村長(33)によると「衛星テレビでトル コの連続ドラマを見るのが村民の楽しみな んだ」。


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